8月から12月にかけて調査が本格化する
法人や個人が行った税務申告が正しく行われているかどうかについて、税務署によって行われる調査が税務調査です。すでに経験された方もいらっしゃるかもしれません。8月ごろから年末にかけて調査が集中します。急に調査を迎えて慌てないよう、あらかじめ準備をしておくことが大切です。
税務調査がこの時期に集中するのは、日本の経済活動のカレンダーを見れば、ある意味では当然です。3月には確定申告の締め切りがあり、所得税の納税が行われます。また日本の企業は多くが3月を会計年度末としており、その税務申告が5月と6月に集中します。そのため3月から6月にかけての税務署は決算処理に追われ、年間を通して最も忙しい時期を迎えます。署外に出て調査にあたる余裕はありません。また税務署は6月末に年度替わりとなるので、7月は人事面でも落ち着きません。さらに、税務調査は行き当たりばったりで実施するのではなく、事前の調査・検討が行われるので、その時間も必要です。そのため、本格的な実施は8月のお盆休み明けから12月にかけて、ということになるのです。
税務調査を受ける確率は「3%」でも経理業務はきちんと実施
税務調査の対象になる法人や個人の数は決して多くありません。国税庁では調査の実施数(実調率=実地調査の件数を対象法人数で除したもの)を「調査事績の概要」として毎年11月に公表していますが、法人の実調率は1989年(平成元年)に約8.5%でしたが、2013年には3.0%まで低下しています。同様に、個人の実調率は2.3%で、こちらも2013年には1.0%にまで下がっています。単純計算では法人は33年に一度、個人は100年に一度しか行われないということになりますが、もちろんそう単純ではありません。税務署も、もともと少ない人員と時間を使って調査を行うのであり、追徴税が取りやすいと思われるところにはきちんと狙いを定めてきます。ほとんど税務調査を受けない法人や個人があると同時に、厳しく、繰り返し調査を受ける法人や個人があるということになります。
また、2014年以降の傾向として、一貫して減少してきた税務調査件数が、法人税、所得税、相続税、消費税のすべての税目で、前年度に比べて上昇しています。法人税については95,000件の調査が実施され前年比104.9%となりました。法人消費税についても91,000件で同105.4%などとなっています。
法人税で不正発見の割合が高い業種と不正1件あたりの不正所得金額が多いものの、それぞれのトップ10は次の表に見る通りで、これらの業種は、今後も税務調査を受けやすいと考えることができるでしょう。
不正発見割合の高い10業種(法人税)
順位 | 業種目 | 不正発見割合(%) | 不正1件あたりの不正所得金額(千円) | 前年順位 |
---|---|---|---|---|
1 | バー・クラブ | 57.1 | 14,167 | 1 |
2 | パチンコ | 29.6 | 57,216 | 3 |
3 | ホテル・普通旅館 | 28.4 | 16,029 | - |
4 | 廃棄物処理 | 27.3 | 14,126 | 4 |
5 | 一般土木建築工事 | 27.2 | 10,178 | 6 |
6 | 職別土木建築工事 | 26.4 | 7,860 | 7 |
7 | 土木工事 | 26.2 | 7,895 | 5 |
8 | 自動車修理 | 25.6 | 4,382 | 2 |
9 | 貨物自動車運送 | 25.1 | 12,654 | 8 |
10 | 管工事 | 24.1 | 5,299 | - |
資料:「平成26事務年度 法人税等の調査事績の概要」平成27年11月 国税庁
不正1件あたりの不正所得金額の大きな10業種(法人税)
資料:「平成26事務年度 法人税等の調査事績の概要」平成27年11月 国税庁