老老介護で起こりがちな家族トラブルと解決策

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2017年8月、老老介護の苦悩と夫婦愛を描いた短編映画「此の岸のこと」が日本公開されました。監督は、高齢者問題をテーマにした作品で国内外から評価を受けている外山文治氏。日本を代表する演出家の故蜷川幸雄氏が設立した高齢者による演劇集団「さいたまゴールド・シアター」所属の団員が出演しています。

本作は2010年に制作。各国の映画祭で上映され、モナコ国際映画祭2011では最優秀作品賞をはじめ、最優秀芸術映画賞、最優秀博愛映画賞、最優秀共演者賞、最優秀撮影監督賞の五冠を達成しました。

そんな本作が取り扱うテーマは、「老老介護」。介護を続けるうちに、周囲との関係性が途切れ、孤独に陥っていく夫婦の姿を台詞なしで綴っています。

老老介護、その現実とは?予め知っておきたい起こりがちな問題と費用について」の記事で紹介したデータからもわかるように、老老介護は極めて身近な問題であり、様々な家族トラブルの原因になります。今回は、老老介護で起こりがちな家族トラブルとその解決策について考えてみたいと思います。

周囲の助けが得られずに追い込まれていく

老老介護は、夫婦間だけでなく、親子間でも起こり得る状態です。たとえば、65才を過ぎた子供が90代の親の面倒を見るという状況もまた老老介護となります。

高齢の親の面倒を見るのは元来大変なことではありますが、身体的な衰えだけでなく、認知症がある場合には、介護者のストレスもさらに大きくなります。もはや、単に愛情だけで乗り越えられる問題ではなく、現実的な対応策を考えなければならないのです。

たとえば、妻が夫の両親を、あるいは夫が妻の両親を介護しているケースはよく耳にします。しかし現実には、配偶者の協力を得られないケースもあります。配偶者にとって、自分があなたの両親を介護することはおろか、あなたがあなたの親の介護をすること自体に対しても、よく思えないケースがあるのです。

このように配偶者の理解や協力が得られない場合、1人で問題を抱えがちになり、問題はより深刻になります。

認知症がある場合など、自分自身の親であっても介護に対してストレスを感じることがあるのですから、血縁関係のない配偶者が義父や義母の介護に非協力的がちになることは心情的に理解できる面もあります。

また、血縁関係のある兄弟姉妹でも、遠方に住んでいて、現実的に介護の協力をすることができないことが考えられます。あるいは、兄弟姉妹のうちの1人が介護をしていることをいいことに、意図的に関与しないという場合もあるかもしれません。

せっかく、協力を要請できる関係にあるのに、それができていない場合、何らかの方策を見つけなければなりません。

トラブルの予防策や解決策

生活相談員などへ相談

老老介護を始めとする介護に関する問題では、1人で悩んでいるだけでは解決しないことが多いといえます。これは介護に対する支援制度や介護サービスの内容は多岐にわたり、専門的な知識が必要になることとも関係しています。

また、兄弟姉妹や親類に協力を仰げば解決できる問題なのに、それを抱え込んでしまって顕在化できない場合もあります。

まずは1人で問題を抱え込まないで、地域包括支援センターや社会福祉協議会の相談窓口、あるいは民間の介護施設の生活相談員などに相談してみることが大切です。

盆正月に腹をわって話す機会を

特に、兄弟姉妹の場合、それぞれが家庭を持ち、普段の生活に忙殺されて、他の兄弟姉妹が抱えている問題について思いを巡らすことが少ないことも考えられます。

電話やメールで相談を持ち出すのには気が引けるという場合でも、盆や正月に兄弟姉妹と会う機会があれば、そのときに率直にお互いの意見を交換するのも良い方法といえます。

財産分与などで報いる

自分だけが介護をして、不公平感を覚える場合もあるようです。そのような場合には、相続についてどのような考え方を持っているのか親や兄弟と率直に話し合うことも大切です。

たとえば、遺言などを活用し、介護をしてくれている子供に対して、財産分与を多くするといった方法も考えられます。遺言には、相続の具体的内容だけでなく、親の思いや遺族に伝えたい事柄などを「付言事項」として記載することができます。

まとめ

以上のように、老老介護が引き起こす家族間のトラブルには様々なものがありますが、総じていえば、日頃からお互いのコミュニケーションを密にすることが最良の解決方法となるのではないでしょうか。

特集:老老介護と向き合うために知っておきたい現状と対策

第1回老老介護、その現実とは?予め知っておきたい起こりがちな問題と費用について
第2回老老介護で起こりがちな家族トラブルと解決策とは
第3回受給資格期間が10年に短縮!しっかり受給したい老老介護時代の老齢年金
第4回老老介護時代に備える資産運用は安定収入が確保できるアパート経営が魅力的