「生前整理にはエンディングノートを活用するのが良い!」そんな話を聞いてエンディングノートを用意してみたものの、書き進めることに難しさを感じてしまった方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、エンディングノートとはどんなものかについて、あらためて整理し、書き進め方やその活用法を考えてみたいと思います。
エンディングノートとは何か
エンディングノートは、自分が今まで歩んできた足跡やこれからやってみたいこと、所有している資産、介護状態や死後の対応についての希望など、家族や身近な人に伝えておきたいメッセージをまとめておくノートのことをいいます。
エンディングノートと聞くと「遺言書の類似ツール」とイメージする方も多いかもしれませんが、遺言書とは違い、法的な拘束力を有していません。
それではなぜ、エンディングノートを書くことが大切なのでしょうか。
エンディングノートの目的とメリット
エンディングノートを書くメリットのひとつとして「資産をはじめとした現状の把握と整理」が挙げられます。
例えば、法的な拘束力を有する遺言書を作成するためには、自分自身が所有している資産および法定相続人と法定相続分を把握したうえで、自分の死後に相続トラブルが起こらないように熟慮し、作成していく必要があります。
そこで、情報を把握するために書き出し、整理していくといった下準備をするにあたって、エンディングノートが役立ちます。
エンディングノートの資産を把握するページには、どんなことを記しておけば良いか項目が示してあり、必要事項を埋めていくことで遺言書作成のための情報整理をスムーズに行うことができます。
ただし、エンディングノートが大切なのは遺言書準備ツールとしての理由だけではないことも知っておきましょう。
今までの人生を振り返ってやりたいことを見つけたり、やろうと思っていてそのままになっていたことなどを思い出したり......。こうした振り返りをもとに、残りの人生をどう生きたいかをあらためて考える契機づくりにもエンディングノートは役立ちます。
一生に与えられている時間は、誰しも有限です。有限である人生を有益に使っていくためには、年齢に関係なく、しばしば立ち止まり、考えを整理することが必要になるもの。そのツールのひとつとして、エンディングノートは有効なのです。
エンディングノートの内容と書き方は?
エンディングノートは、そのノートにより順番やボリュームは様々ですが、一般的に以下のような構成となっているものが多いでしょう。
1. 自分の人生についての振り返り
自身の名前や生年月日などの情報、自分史、思い出、親戚友人の連絡先、これからやりたいことなど
2. 介護や医療の現状と希望
現状受けている介護サービスとネットワーク、希望する介護サービス、かかりつけ医、持病やアレルギーなど
3. 財産のリストアップ
不動産、預貯金、有価証券、自動車、保険、年金など
4. 葬儀やお墓についての希望
葬儀、お墓、法要、仏壇など
これらの項目をひとつずつ埋めていくことで、エンディングノートが完成します。しかし、書き進め方に決まりはありません。1ページ目から完璧に埋めていく必要はなく、パラパラとすべてのページに目を通してみてから、書けそうなページから埋めていくとよいでしょう。
また、市販のものではなく自作することも可能です。遺しておきたい思いを詰め込んだ、オリジナルエンディングノートを作るのも一案でしょう。その場合には、先に挙げた項目だけでなく、以下のような項目も考えられます。
- パソコンやネットサービスなどの登録アカウント
- 解約が必要なサービス一覧
- 恩師や旧友の連絡先、伝えたいこと
- 物的資産や宝物などの置き場所
- ペットの処置
- へそくりや内緒の保険など
- ご近所付き合いで気をつけていること
- 家庭の味のレシピ
- 形見として持っておいてほしいもの
- 緊急の時に手助けしてくれる親しい友人の連絡先
マイクロソフトがOfficeのテンプレートとして「エンディングノート」を公開しているほか、インターネットで「エンディングノート テンプレート」と検索するといろいろ出てきます。ぜひ活用してみてください。
エンディングノートの活用法
よくあるエンディングノートについての誤解に「書き終わったら大事に仕舞っておくもの」だという認識があります。しかし、「エンディングノートは書いて終わり」ではありません。
書き出してみたことで気づいたことや、口頭で伝えておきたいことが出てくるものです。そこで、家族と話し合うコミュニケーションのきっかけとして活用するのがおすすめです。
例えば、お墓や葬儀の希望や生前予約をしている旨をエンディングノートに記したとします。しかし、いざ葬儀となった際に家族がエンディングノートの存在を知らなければ、その希望は実現してもらえないでしょう。そのため、「エンディングノートを書いて、ここにしまってある」ということをあらかじめ伝えておく必要があるのです。
「判断能力が衰えた後も自分らしい生き方をサポートしてもらいたい」と思っていても、それを面と向かって説くのは難しい。しかし、エンディングノートに書いてある、と伝えるだけならハードルも低くなるはずです。
また、希望ばかりを書いてしまうと、理想に走りすぎてしまうかもしれません。そうなると、「いざ」というときに実現してもらえない可能性が出てしまいます。
そこで、エンディングノートをある程度埋めたら「もしものときの希望を書き出してみたけど、難しいかな?」と相談し、家族と一緒にノートを作り上げていくのもおすすめです。
こうすれば元気なうちに家族とコミュニケーションを深めていくこともできますし、双方が納得したうえで保険や相続も決めていけるでしょう。
エンディングノートの保管に注意
遺言書のような法的な拘束力がないとしても、エンディングノートには大切な情報が詰まってますので、保管場所には十分に注意しましょう。
人目に付きやすい場所で保管するのは危険です。訪問者や空き巣など他人の目に触れてしまう可能性もあります。また家族であっても、資産の情報などを知られてしまってはトラブルの原因になりかねません。
基本的には人目に付かない場所に保管し、信頼のおける人物にだけその場所を教えておく。パスワードや詳細な資産情報は別のノートに書き込んでおき、目的ごとに使い分ける。このように、自分にあった方法で管理しておきましょう。
ただし、いざとなったときに家族が見つけられないのではエンディングノートの意味がありません。貸金庫や自宅の金庫に保管するときは、家族の誰かだけでも取り出せるように開け方を知らせておくことが大切です。
まとめ
エンディングノートは「終活ツール」として活用されるイメージが強いですが、亡くなった後の対応について希望を記すだけのものではありません。自分が自分らしく、よりよく生きるために、自分の考えや状況を整理するツールとして前向きにとらえてみてはどうでしょうか。
特集:生前整理を具体的に考えてみよう
第1回:生前整理をやるべき意味と理由!最初に始めるべきこととは
第2回:初めてのエンディングノート!書き進め方と活用法について【当ページ】
第3回:事例で学ぶ生前整理!病気やケガを患う前に始めることの重要性
第4回:生前整理をポジティブに考えよう!前向きな気持ちになれる事例集