土地を購入して戸建住宅を建てる人にとって難しいのが土地選びです。どんなに良い家を建てても、立地や周辺環境が悪ければ「良い住まい」とは呼べません。
今回は37歳のサラリーマンである山田さんのケースを見ながら、購入する前に把握しておきたい土地選びの注意点を解説します。
この記事で学べること
土地の条件として検討しておきたいポイント
見落としがちな土地の建物規制
土地の「用途」「形状」「借地権トラブル」について
条件を整理し、優先順位を決める
最低限の条件をピックアップしておこう
希望するすべての条件を満たす土地が見つかるとは限りません。条件に優先順位をつけて、妥協できる条件とできない条件をあらかじめ整理しておきましょう。
条件をリストアップして整理することで、不動産会社にも伝えやすくなり、満足度の高い土地が見つかりやすくなります。
山田さんの場合
プロフィール
37歳。専業主婦の妻、幼稚園に通っている4歳の娘、生後半年の息子の4人家族。会社勤務地は千葉。軽自動車を所持。
必須条件
- 今は千葉に通勤しているが、東京のオフィスに異動になる可能性もあるので、双方にアクセスしやすい場所を希望。船橋駅や新船橋駅の近辺、総武本線沿いだと良い。
- 二人の子どもがいるので、近くに小学校・中学校が欲しい。
- 妻の買い物のため、大型のスーパーが欲しい(ただし車があるので、徒歩圏内でなくても良い)。
- いざというときのため複数の病院へアクセスできる場所が良い(ただし車があるので、極端に遠くなければOK)。
希望条件
- 子ども部屋を2つと自分の書斎、小さくても少し走り回れる程度の庭が持てる程度の広さが欲しい。
- 国内出張が月に1回程度あるので、東京駅や羽田空港にアクセスしやすい場所がいい。
- 子どもをのびのび育てたいので、自然が感じられる場所や公園の近くを希望。
- キャンプが趣味なので、キャンプが楽しめる所が近くにあれば嬉しい。
希望する条件はさまざまですが、リストアップして取捨選択すれば、考慮すべき条件がシンプルになり、土地も探しやすくなります。
土地の条件として検討しておきたいポイント
周辺環境
そのエリアにどのような特徴があるのかを調べましょう。商業施設などが集まっているエリアは買い物などには便利ですが、騒音や渋滞などに悩まされるというデメリットもあります。
郊外の土地は静かで自然も多いですが、駅から遠くて不便だったり、夜になると街頭が無くて暗いといったデメリットがあります。
不便さ、騒音、治安、公害、光害など、日常生活でストレスの原因になりがちなポイントについては、事前によく確認しておきましょう。
交通の利便性
主に利用することになる公共交通機関について確認し、そこでの生活のイメージを広げることが大切です。
通勤・通学に掛かる所要時間はもちろん、最寄り駅の本数や混雑具合なども調べておく必要があります。異動や子どもの進学など、状況が変わっても対応できるかどうかもチェックしておきたいです。
駅に近い土地であれば通勤や通学、買い物なども便利ですが、線路沿いだと騒音に悩まされるというデメリットもあります。駅から遠い土地であれば静かですが、あまり遠いと自家用車が必要になります。
周辺の施設
近くにスーパーやコンビニなどがあるかどうかを確認しましょう。職場から自宅までの道のりにスーパーがあると、仕事帰りに立ち寄れるので便利です。
他にチェックするべきは、銀行や郵便局、役所(出先機関)などの公共施設や病院です。どの施設の位置と移動経路、所要時間を確認しておきましょう。
特にスーパーや病院などは、将来、歳を重ねたときにも通えるかどうかを考えてみることも大切です。
土地の将来性
再開発地域や大都市のベッドタウンなどは、今は不便でも将来は交通網が整備されたり商業施設が充実したりして便利になる可能性があります。そのエリアが将来どのようになるか予測して選ぶのもおすすめです。
見落としがちな土地の建物規制も必ず確認する
土地によって建物の規制がありますので、事前にチェックしておかないと希望する家が建てられないというケースも考えられます。
山田さんの場合
東船橋近郊で利便性を重視しつつ、4人家族で住んでも不自由を感じないくらい広さが欲しくて20坪の土地を購入しました。ただ、土地を購入するときに規制に関してはあまり考慮してしておらず、思っていたより小さな家になってしまいました。
山田さんが選んだこの土地は北側斜線にかかるエリアで建蔽率が60%の土地。そのため、もともと3階建て延床120㎡は欲しかったにもかかわらず、100㎡程度に妥協せざるを得ませんでした。
山田さんのようなケースは実際によくあります。図面付きの土地に惑わされないように、土地の建物規制はきちんと確認しておきましょう。
建蔽率
建蔽率は敷地面積に対する建物の割合を示していて、防火や住環境を配慮して定められています。たとえば建蔽率70%で、100平方メートルの土地があった場合は、70平方メートルまでの建物を建てることができます。
よくある失敗例:「庭は要らないから家をとにかく広くしたい」という方が建蔽率の小さい土地を購入してしまうと、希望通りの広い家を建てられない可能性があります。
容積率
容積率は敷地面積に対する建物の延面積の割合です。建物の規模と道路などのバランスを保ち、住環境を維持するために定められています。
たとえば容積率70%で、敷地面積が100平方メートルの土地があった場合は、床面積が70平方メートルの家が建てられます。容積率も家の広さに大きく影響しますので、土地を選ぶ際には十分考慮しましょう。
北側斜線
建物の高さを制限する規制で、周辺の家屋の日当たりや風通しを確保する目的で定められています。
よくある失敗例:3階建ての家を立てようと思って購入した土地ですが、北側斜線が定められていたために3階部分が極端に小さくなってしまったという事例があります。
防火地域
火災を防止するため建築制限が行なわれる地域で、特に住宅密集地などで定められています。
3階建て以上、もしくは延面積が100平方メートルを超える建築物については「耐火建築物」としなければなりません。
延面積が100平方メートル以下で2階建て(地階を含む)以下の建築物についても「耐火建築物または準耐火建築物としなければならない」という制限があります。
よくある失敗例:防火地域の土地を購入した結果、家を防火仕様にしなければならず、思ったよりも費用がかかってしまったというケースがあります。
用途地域を調べれば今後の予想ができる
土地によっては用途が定められており、使用用途を把握しておくことで、今後家の周りにどのような建物が建つのかがわかります。
一戸建てや小規模な店舗、公共施設、小中学校、診療所などが建てられる「第一種低層住居専用地域」や、第一種低層住居専用地域の他にコンビニなどの店舗が建てられる「第二種低層住居専用地域」、その他「第一種中高層住居専用地域」や「準住居地域」など、12種類に分けられます。
たとえば、「準住居地域」であれば10,000平方メートルまでの店舗やホテル、商業施設などが建設可能です。便利になる可能性もある一方で、騒音や渋滞が発生するリスクも考えられます。
土地の形状にも注意!
土地の形状によって建物に物理的な制限が生じる可能性もあります。三角形やひし形など、正方形や長方形以外の形をした「変形地」は、家の形が大きく制限されます。旗のような形状になっている「旗竿地」は「車の出入りがしにくい」「家の面積が狭くなる」などのデメリットが考えられます。
ただし、変形地をうまく活用して個性的な家を建てるという手段もあります。たとえば、三角形の土地を利用して、家も三角形にすることが考えられます。全面から見ると三角形の頂点がスタイリッシュなフォルムに、奥行きは広々とした家をつくることも可能なのです。
こうした家づくりを得意としている設計事務所や工務店もありますので、変形地を購入する場合は相談してみると良いでしょう。
借地権トラブルにご用心!
土地を購入するのではなく人から借りる場合は借地権トラブルにも注意してください。
土地と建物で所有者が別々になってしまうために起こるトラブルが多く、地代の一方的な値上げや、一時金を要求されるなどといったケースもあります。
家を売却する際にも「土地の所有者が承諾しない」「名義書換料を請求される」といったトラブルも多いです。
まとめ
土地選びは今後の暮らしを左右する重要な要素なので、事前に条件をピックアップし、妥協せずに選ぶことが大切です。周辺環境の変化やトラブルなど、起こり得るリスクもしっかりと予測した上で土地を選びましょう。
また、先々自分が家を出て、子どもに土地を譲るケースまでイメージできていると、なお良いでしょう。売却益を考慮して地価や相場変動を予想したり、相続した場合にメリットが出るようなライフプランが組み立てるのも重要です。