相続登記の義務化検討の理由!所有者不明の土地に潜むデメリットとは

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相続登記がされない原因

ではなぜこれだけ多くの土地が、相続登記されずに所有者不明となってしまうのでしょうか。その原因はさまざまな理由が考えられます。

ひとつは、相続する土地から十分な恩恵が得られないと感じているためです。資産価値もなく、利用価値もなく、売ることも難しい。そんな土地を、相続税や固定資産税を払ってまで所有したくないと考える人がいます。

これにくわえて登記自体に法的な義務がないことも、相続登記されない要因となっています。手続きも煩雑で難易度が高く、司法書士に依頼しなければならないので、その分の費用と手間を掛けたくないとも考えるため、相続登記に前向きにならないのです。

相続登記をしなかったときのデメリット

相続登記は現時点で義務ではありませんが、相続登記をしないことで被るデメリットもあります。

相続関係の複雑化

デメリットの1つ目は、相続関係の複雑化です。

相続登記を行うまでは、法定相続分に応じて、相続人全員で不動産を所有している状態になります。相続人が亡くなった場合、その相続人が持っていた権利は妻や子供にうつります。

上図のように、相続人Aが死亡した場合、その権利はDとEにうつります。遺産分割協議で相続登記をするさいには、相続人全員の同意と印鑑が必要になるため、相続人が増えれば増えるほど手続きが難しくなることが考えられます。

不動産を売却・担保にできない

2つめは不動産の売却・担保にできない点です。

不動産を売却したい・担保にしたいといった場合には、所有権をはっきりさせなくてはいけません。不動産という高額な買い物ですから、相続登記が行われていないような所有者が不明な土地は買えませんし、誰に売ってくれと言えばいいのかわかりません。担保としての信用を得ることも難しいでしょう。

また、もしも相続人のなかに借金がある人がいた場合債権者に不動産の相続持分を差し押さえられることがあるのにも注意が必要です。

法務省の今後の取り組み(対策)

所有者不明土地を減らしていくために、法務省は研究会などを設置し、相続登記に関わる改善策の提案を続けています。

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の一部施行

この所有者不明土地法は、平成30年11月15日に一部施行され、名義人が死亡した土地に対して、法定相続人等に登記手続を直接促すなどの不動産登記法の特例を設けました。

これによって、登記官は所有権の登記名義人の死亡後長期にわたり所有権の登記がされていない場合に、職権でその所有権の登記名義人の相続人に対して、必要な登記手続の勧告をすることなどが可能になりました。

また、国の管理体制の対策案だけでなく、相続登記を行う相続人に関する対応策も検討されています。

法定相続情報証明制度

平成29年5月から始まった制度です。相続が発生したものの遺言がない場合、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を集めなければなりません。

しかし、相続乗法証明制度では、最初に戸籍謄本等一式を法務局に提出すれば、その後は登記所が発行する1通の証明書を提出するだけで済むようになります。

所有権の放棄制度検討

所有者による利用や管理、売却が難しい土地の所有権を放棄できる制度の検討が行われています。

所有者不明土地の一時的な受け皿となる新たな組織を設置し、不明土地の利用やリース、売却、国・公有地化などを進める提案がなされています。政府は2020年までの関連法改正を目標としています。

まとめ

今後順次法改正が進んでいくなかで、相続登記をしないデメリットに注目が集まることが考えられます。

新制度が施行されれば、相続登記に関する相談や手続きが増加し、対応が間に合わなくなる可能性もあります。

もしご自身の周りで扱いに困っている不動産がある心当たりがあるのでしたら、今のうちに弁護士や司法書士、FP(ファイナンシャルプランナー)などの専門家に相談してみるのをおすすめします。まずは自分の現状を把握し、今後の法改正に備えていきましょう。