深刻化する「8050問題」の実態と対策!介護の現場で起こっている新しい問題とは

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いま、「8050問題」が社会問題になりつつあります。これは、ひきこもりの人の面倒を年老いた親が見続ける世帯が急増しているという問題です。

今回は8050問題の現状や対策事例について解説するとともに、8050問題と同様に深刻化している新しい介護の社会問題についても取り上げます。

8050問題とは何か?

8050(ハチマルゴーマル)問題の「8050」とは、80代の親が50代のひきこもりの子どもの面倒を見続けることを指します。

「ひきこもり」という言葉が社会問題として世に出始めたのは、1980年代から90年代にかけてのこと。当時は若者の問題とされていましたが、その当時ひきこもりになってしまった若者が、約30年経った現在までひきこもり続けてしまっていることが、この8050問題を引き起こしている要因です。

厚生労働省の調査によると、65歳以上の人がいる世帯の世帯構造で「親と未婚の子のみ世帯」の増加傾向も顕著となっています。1986年では11.1%であったのが、2016年には20.7%と、30年間で倍増しています。

親が歳をとれば、健康上あるいは経済上の理由によって、いつか子供の面倒を見きれなくなるときが訪れます。

「親子ともども社会から孤立し、生活に困窮する」あるいは「親が亡くなり、子供が経済的に困窮して生活ができなくなる」といったケースが考えられ、孤独死、親子共倒れといった悲劇も起こりかねません。

このような背景がありながら問題として認知されにくかった理由には、実態調査の対象年齢にあります。過去に国が行ってきた調査の対象年齢が39歳までだったため、中高年世代のひきこもりの実態が掴めませんでした。加えて、世間体を気にするあまり、子供のひきこもりを隠してしまう親が多いのも、原因のひとつとして挙げられます。

8050問題の対策事例

厚生労働省は2009年に「ひきこもり対策推進事業」を創設し、全国66ヶ所に「ひきこもり地域支援センター」を設置しました。地方自治体やハローワークと連携し、相談窓口業務や自立支援、就業支援、ひきこもりに関する啓発活動などを行っています。

「ひきこもりサポーター養成研修事業」も実施。ひきこもりを早期発見し、ひきこもっている本人もしくは親を支援する人材育成にも力を入れています。研修を修了したひきこもりサポーターは、市町村から派遣という形でひきこもりになった人の自宅を訪れ、自立支援を行います。

2018年、厚労省は「就労準備支援・ひきこもり支援の充実」のための費用として新たに来年度予算13億円を計上。ひきこもりとなっている中高年者に対して就業支援を行い、自立を促す体制を強化する方針です。

一方で、「就業支援だけでは不十分」「学校や企業になじめずにひきこもりとなってしまったケースが多いため、社会全体が変わらなければ根本的な解決にはならない」と指摘する専門家もいます。

内閣府の『平成22年版若者白書』に掲載されている「若者の意識に関する調査(ひきこもりに関する実態調査)」によると、ひきこもりになったきっかけで最も割合が大きいのが「職場になじめなかった」と「病気」です。次いで「就職活動がうまくいかなかった」「人間関係がうまくいかなかった」といった理由が並んでおり、ひきこもりを社会全体の問題と捉えなければ改善は難しいのかもしれません。

また、ひきこもりの人でも働けるプラットフォームとして「クラウドソーシング」に期待が集まっています。ネット上のシステムを利用することで仕事をしたい人と仕事を発注したい人が契約できるという仕組みです。

クラウドソーシングであれば受注から業務完了までをネットで完結できるので、人と会う必要もなく、一人で仕事をすることができます。こうした新しい働き方も、有効なひきこもり対策になり得ます。

8050問題に対する認知が高まったことにより、官民問わずさまざまな対策が検討されていますので、今後に期待したいところです。