高齢化による家庭内介護は増加の一途をたどり、介護人口の増加による国内の「介護離職」は重要な社会問題となっています。
介護によって退職を余儀なくされる介護離職者は年間10万人。くわえて仕事と介護の両立を続けて心身ともに限界を迎えている「介護離職予備軍」は年間100万人ともいわれています。
介護離職により経済的に困窮することは避けたいところです。介護離職の現状を踏まえた上で、仕事と介護を両立するための方法について詳細を解説していきます。
介護離職の現状と今後の見通し
平成29年の介護離職者数は約10万人となり、これは5年前と比較してもほぼ横ばいです。このうち、離職後の有職者は7千人ほど増加しており、各種制度の利用が進んだために離職後に再就職できる率が上がっていると見られています。
2021年以降、団塊世代や団塊ジュニア世代の高齢化が進み、要介護認定を受ける人が増え続けると見られています。特別養護老人ホームなどの入所待機者数は2040年までに現在の4倍近くになると予想されています。
介護職員の慢性的な人材不足は深刻です。2025年には253万人の人材需要が見込まれながら、介護職員は215万人ほどしか確保できない見通しです。そのため、介護を理由に離職する人はさらに増加していくことが考えられます。
介護人材需給のギャップ
介護離職を余儀なくされる理由
1.仕事場でのコミュニケーション不足
「職場の人に親の介護をしていることを言えない」「仕事内容の軽減や勤務体制の変更を相談できない」など、職場の人、特に上司と十分なコミュニケーションが取れていないケースが多く見られます。
「家庭の事情を相談することで、職場に負担や迷惑をかけるのではないか」「職場での待遇が悪くなるのではないか」という不安があるからです。
その結果、仕事と介護の両立が長期化し、心身ともに限界を迎えて、介護離職をしてしまうケースが多いのです。
2.介護休業法や介護休暇制度への理解が不十分
介護休業法や介護休暇制度など介護者を救済するための制度があるにも関わらず、本人や会社が内容をよく理解していない、あるいや存在自体を知らない傾向があります。
その背景には、制度がやや複雑なことや、制度利用者実績がまだ少ないことがあります。制度を普及させていくためには、制度利用者数の増加が不可欠です。
3.介護休暇取得によるリストラ不安
在宅介護をしている人は、働き盛りを少し過ぎた40〜50代が多く、経営不振の企業ではリストラや自主退職の対象になりやすい年齢です。
そのため「介護休暇を取得すれば、職を失うのではないか」という懸念につながり、制度を利用することができず、結果として心身ともに限界を迎え、介護離職してしまうことがあります。