介護の現場では8050問題以外にもさまざまな新しい問題が生じている
少子高齢化にともない、8050問題だけでなくさまざまな問題が深刻化しています。ここからはそれらの問題について解決事例とともに解説します。
老老介護
「高齢の妻が夫を介護する」「歳をとった人がさらに高齢の親を介護する」など、65歳以上の高齢者が65歳以上の高齢者を介護しているケースが増えています。
2017年度の国民生活基礎調査では、在宅介護をしている世帯の約半数が老老介護に陥っているという調査結果が出ています。
解決事例
42歳のAさんの父親は68歳。父は、定年退職後もアルバイトで生計を立てながら94歳になる母親を介護していました。Aさんも子育てや仕事で忙しく手伝いができない状況でしたが、ケアマネージャーに相談することで94歳の母親は通所介護を受けることができるようになり、Aさんの父親の軽減を負担することができました。
認認介護
認認介護とは、認知症の要介護者を認知症の介護者が面倒を見ている状況です。老老介護がやがて認認介護に発展するケースも少なくありません。
要介護申請を行っている認知症患者は2010年時点で280万人。要介護認定を申請していない認知症予備軍は800万人と言われています。そのなかで、認認介護に陥っている人も相当数いるものと思われます。
解決事例
53歳Bさんの父親は認知症が進んでいる状態。それまで母親が介護をしていましたが、最近になって母親にも認知症傾向が現れました。車の運転などもできなくなり、自宅で介護することが難しくなったため、Bさんは地元のグループホームの生活相談員に相談。夫婦ともに、入居することに決まりました。
9060問題
8050問題がさらに発展したものです。今後、90代の親が60代の子の面倒を見るケースも増えると考えられます。子も高齢者となり、介護や身の回りの世話が必要なうえ、就業もしづらくなり、ますます自立が難しくなる状況が危惧されます。
解決事例
Cさんの兄(61歳)はうつ病を発症しひきこもりに。それまで91歳の母親が食事などの面倒を見ていたが、体調を崩してそれも難しくなってしまいました。
Cさんは仕事をしているため、母親と兄につきっきりで面倒を見ることはできないため、市役所の自立相談支援窓口に相談。母親はデイサービスに通い、兄は就業訓練を受けています。
介護の問題が顕在化する要因とは?
介護の問題が顕在化する要因には「平均寿命(亡くなるまでの期間)」と「健康寿命(介護なしで生活ができる期間)」の差が開いていることが挙げられます。男性の平均寿命は79歳、平均健康寿命は70歳。女性の平均寿命は86歳、平均健康寿命は73歳。ともに要介護期間は10年近くあることになります。
日本は世界でもトップクラスの長寿大国。これは大変素晴らしいことなのですが、一方で要介護期間を伸ばしている要因にもなっています。親や配偶者の介護をしているうちに自分も健康寿命が尽きて要介護となり、老老介護、認認介護などの問題に陥るケースも多いのです。
健康寿命が伸びれば介護期間も短くすることができます。今後は平均寿命とともに、いかにして健康寿命を伸ばすかということが課題と言えます。
介護の問題にどう向き合えば良い?
8050問題をはじめ、介護にまつわる問題についてはご理解いただけたかと思います。それでは実際にご自分がこうした問題につきあたったときにどうすれば良いのでしょうか?最後に介護の問題への向き合い方についてご紹介します。
まずは今回ご紹介したように、8050問題や老老介護など、どのような問題が存在するのか、どんなリスクがあるのかを正しく知ることが重要です。認知症や脳血管疾患などの知識も学んでおきましょう。
そしてあらかじめ対策方法を考えて周囲の人に相談することが重要です。親の介護についてどうするのかを兄弟姉妹あるいは親戚と話し合う、地域の生活相談員に相談するなど、人の知恵も借りましょう。
一人ですべて抱え込んでしまったがゆえに、8050問題や老老介護、認認介護に陥るケースも少なくありません。前章の解決事例でも、誰かに相談して力を借りているということが共通しています。
老人ホームやグループホーム、デイサービスなど施設の利用も検討してみましょう。介護者の負担軽減はもちろん、要介護者にとっても「安全な介護を受けられる」「困ったときはいつでも助けてもらえる」「生活にメリハリが出る」「人とコミュニケーションがとれる」など、メリットはたくさんあります。
すでに8050問題が発生している、認認介護に陥って生活に困っているというようなケースであれば、生活保護などのセーフティーネットを活用する必要もあるかもしれません。
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まとめ
8050問題や、介護に関わる問題が発生した場合は家族や親族、専門家に相談して手を借りることが重要です。
解決する方法はさまざまあります。決して無理をせず、一人で抱え込まないでください。人の力を借り、制度や施設あるいはセーフティーネットを活用しながら、うまく問題と向き合っていきましょう。
また、「親子で収入や資産の話をするのは避けるべき」と思われがちですが、家族で素直にお金の話をするのもとても大切なことです。自分だけの問題として捉えず、家族で解決していく姿勢が、解決の糸口になるのではないでしょうか。