今日から始める相続対策!「民事信託」ってなあに?

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遺言書や後見人制度に代わる新しい相続対策として「民事信託」が話題を集めています。しかし、「具体的にどのような仕組みなの?」「メリットやデメリットは?」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。

「民事信託」は、老後の不安に合わせて、信頼できる人に財産管理などを任せることができる、とても便利な仕組みです。

今回は、「民事信託」の基本的な仕組みを解説します。

そもそも「信託」とは?

「信託」とは、大事な人のために財産管理などを依頼したい「委託者」が、信頼できる人である「受託者」と契約を結んで、土地やお金などの財産を移転し、受託者は、委託者が指定した大事な人である「受益者」のためにその財産の管理・処分などをする制度です。

例えば、子のいない太郎と花子さん夫婦を考えましょう。会社を定年退職した太郎は、花子の浪費ぐせが心配。自分に万一の事態が起きた場合でも、愛する妻の花子が生活に困ることがないよう、信頼できる弟の次郎に、財産(自宅と預貯金)の管理を任せ、毎月一定の生活費を花子に渡すという内容の信託契約を結びました。こうして太郎亡き後も、しっかり者の弟・次郎の財産管理のおかげで、花子は安心して暮らしていくことができるのでした。めでたしめでたし。

この例では、財産管理を依頼した太郎が「委託者」、太郎から依頼を受けて財産を管理する次郎が「受託者」、次郎が管理する財産を受け取る花子が「受益者」となります。

信託は「信じて託す」の文字どおり、委託者・太郎と受託者・次郎の間の深い信頼関係を基礎として成立する制度です。我が国では「信託法」という法律によって信託制度の一般的な規定が定められており、受託者には「善管注意義務」「忠実義務」「分別管理義務」など、様々な義務が課せられています。

では、民事信託とは?

このようにとても便利な信託ですが、信託の引き受けを「営利を目的として」「不特定多数の者を相手に」「反復継続して」行う場合には、「信託業法」に基づく免許が必要となります。信託業では、たくさんの人から大事な財産を預かりますので、その免許は個人で簡単に取れるものではありません。

そこで、信託業法に基づく免許が不要となる範囲、すなわち、営利を目的とせず、特定の1人から1回だけ信託を引き受けるような信託を、営業としての信託と区別して「民事信託」と呼びます。先ほどの例は、営利を目的としない、特定された親族間での1回限りの信託であるため「民事信託」に該当します。

信託銀行や信託会社のような事業のイメージが強い「信託」ですが、近年は個人間で行われる免許が不要な「民事信託」、中でも家族や親族間で行われる「家族信託」が注目されており、徐々に広がりを見せています。

特に、高齢化が進む今日では、①財産管理のための信託、②財産の承継を目的とする信託、③管理できない人に代わって財産管理して生活に必要な給付を確実にする信託、④自己の判断能力の低下、死亡に備えて財産の管理・承継をする信託、⑤高齢者・障害者等の財産管理・身上監護に配慮した生活支援のための信託など、相続や老後の財産管理を目的とした様々な「民事信託」が活用されています。

次回は、具体的な「民事信託」の活用方法と、知って得するメリット・デメリットを解説します。