不動産トラブルの起きやすい「借地」と「底地」の基本まとめ

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不動産に関するトラブルには様々なものがありますが、その中には借地や底地に関するものも多く見られます。借地や底地には法的な問題が関係してくるため、一般的にはハードルが高く、馴染みにくい分野と思われるかもしれません。

そこで、5月の特集テーマとして「不動産トラブルで多い借地・底地に関する問題と解決」を取り上げ、4回にわたって借地や底地についての基本的な事項とケーススタディについて解説していきます。

第1回目である今回は、そもそも借地権と底地権とは何なのか、どのようなトラブルが起こりやすいのかということを中心に紹介したいと思います。

借地権、底地権って何?

「借地権」、「底地権」という言葉は聞いたことがあるものの、意味については何となくしかわからないという方も多いかと思います。まずは、借地権と底地権とは何かということを確認しましょう。

「借地権」は建物を所有するために土地を使用する権利

借地権とは、簡単にいうと、建物を所有するために土地を使用する権利です。

たとえば、Aさんが地主のBさんから土地を借りて、その上に戸建住宅を建築して住んでいるとします。この場合、Aさんは借地権を持っていることになります。

AさんはBさんに毎月地代を払って、特に問題もなく生活していました。ところが、仮にBさんが「もう土地を貸すのをやめたいので、来月くらいに土地を明け渡して欲しい」と言い出したらどうなるでしょう。Aさんとしては土地の上に住宅を建てているので、それを取り壊さないと土地を明け渡すことができません。

もし地主のBさんのような主張が認められるとしたら、Aさんに限らず、誰も安心して家を建てることや生活することができなくなりますし、それは社会全体にとっても望ましいことではありません。そのため、借地権は法律でしっかりと守られているのです。

「底地権」は土地を所有している人の権利

底地権とは、借地権が付いている土地に対する、土地所有者の権利のことを指します。上記の例では、地主のBさんが底地権を持っているということになります。

もし、借地権が付いていない土地であれば、Bさんは通常の所有権を有していることになります。しかし、借地権が付いている場合、Bさんは土地の所有権を持っているものの、自由に土地を使用することはできません。そのため、底地権は一定の制約がある所有権、ということができます。

借地権と底地権の関係は?

借地権は法律でどのように定められているのか

借地権は、借地借家法という法律に定められています。この借地借家法は平成4年8月から施行されていますが、実はそれ以前にも、戦前から約71年間にわたって「借地法」という法律が存在していました。

借地権は社会的見地からしても保護されるべき権利ですが、借地法(旧法)では借地権を保護しすぎた結果、地主がかなり弱い立場に置かれていました。そこで、時代に即した形で、借地権者と地主の権利をバランスよく規定し直すため、借地借家法が生まれました。

借地借家法の対象となるのは、民法に規定される地上権(物権)や賃借権(債権)ですが、一般に土地賃貸借契約で発生する土地使用権は、後者の賃借権(債権)と考えれば良いでしょう。したがって、「建物の所有を目的とする土地の賃借権」が借地借家法の対象だということができます。

借地法(旧法)と借地借家法の関係

注意が必要なのは、賃貸借契約が平成4年7月31日までに締結されている場合には借地法(旧法)が、平成4年8月1日以降に締結されている場合には借地借家法が適用される点です。

平成4年というと、ずいぶん昔のことと思われるかもしれませんが、現在でも旧法の借地権の多くが更新されているので、借地法(旧法)と借地借家法が混在して適用されているのが現状です。