年末調整をしたから確定申告はなし!と思っていませんか?確かにサラリーマンの場合、会社からお金が戻ってきます。
でも次のようなケースでは、確定申告した方がおトクな場合があります。
- 副業をしている
- 火事や地震、ドロボウの被害に遭った
- 家族の医療費が10万円以上かかった
- 住宅ローンを組んだ
そこで今回は、よくある「住宅ローンを組んだ」場合を例に、確定申告の流れと結果を見てみましょう。
住宅ローンを組むと、10年間にわたり、毎年のローン残高の1%が所得税から控除されるという優遇措置(現在の制度は2014年4月〜2019年6月居住開始から10年間適用)があります。
しかし、その適用を受けるためには、1年目に確定申告をする必要があるのです。もし忘れていても、5年間は過去にさかのぼって申告できますから、「していない!」という人もあきらめずに税務署に問い合わせてみましょう。
さて、昨年、住宅ローンを組んだサラリーマンのAさん。初めての確定申告に臨みました。どうだったでしょうか?
事例紹介:Aさんの場合
子どもたちが大きくなり賃貸マンションが手狭になったことから念願の一戸建ての住まいを新築したAさん。2,000万円の住宅ローン(元利均等、35年返済)を組みました。
住宅ローン減税の最大控除額は10年間で400万円(40万円 × 10年)ですが、Aさんの建てた住宅は性能の優れた「長期優良住宅」であることから、さらに100万円上乗せされ、500万円となっています。
Aさんが建てた認定長期優良住宅の場合
住み始めた年 | 2014年4月1日〜 2019年6月30日 |
控除期間 | 10年 |
控除率 | 1% |
住宅ローンの年末残高の限度額 | 5,000万円 |
各年の控除限度額 | 50万円 |
合計最高控除額 | 500万円 |
Aさんの1年目のローン残高が2,000万円だったら2,000万円 × 1% = 20万円が所得税から控除されます。
2年目のローン残高が1,900万円であったら、その年は19万円が控除になります。以後、10年目まで同じように控除がおこなわれます。
※ただしこの控除を受けるためには、初年度に確定申告をしなければなりません。
確定申告に必要な書類
税務署から入手 |
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自分で用意 |
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早速、Aさんは、最寄りの税務署に出向いて、シンプルで記入しやすい「A様式」の確定申告書と「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」を入手しました。
家に帰ったAさんは、源泉徴収票などの準備をして次のステップで確定申告の書類づくりを始めました。
(1) 特別控除額を計算
まず必要な数字を記入します。
項目の中に新築した建物の「取得対価の額」を明記する必要がありました。これは、門扉などの外構部分の費用を除いた建築費用のこと。工務店との工事請負契約に明記されている金額が「取得対価」にあたります。
「年末ローン残高」は、銀行からの通知で1,980万円と判明しました。その数字に0.01をかけた198,000円が当年度の控除額になります。
(2) 確定申告書に記入
次は確定申告書に必要な数字を記入しながら、得税額を計算します。「収入」「所得」「控除」の金額は源泉徴収票から転記し、「税金の計算欄」で所得税額を計算していきます。
Aさんの課税所得から計算された所得税額 | 226,800円 |
住宅ローン減税による控除額 | 198,000円 |
差し引き所得税額 | 28,800円 |
復興特別所得税額(28,800 × 0.021) | 605円 |
Aさんの当年度の所得税額 | 29,405円 |
源泉徴収税額が231,563円(所得税 + 復興特別所得税)あるので、Aさんは本来払うべき税額29,405円を大きく超える所得税を、すでに源泉徴収されてしまっています。
そこで差額を計算すると...
Aさんの元には20万円あまりの税金が戻ることになりました!
なお、2年目からは確定申告をしなくても、会社が年末調整をしてくれます。
その際には「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書兼年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」と「住宅借入金の年末残高証明書」が必要になります。
上記の書類は、初年度の確定申告時に税務署で申し込みをしておくと、翌年に残りの9年分がまとめて送られてくるため、これから9年間、Aさんの所得税は大幅に抑えられることになります。
ローン残高が2,000万円あれば、初年度には約20万円の還付があります。ローン残高は毎年少しずつ減っていくものの、全体の金額が大きいので1%といっても大きな額。初年度に確定申告してしまえば、あとは会社が手続きをしてくれます。忘れずに確定申告しましょう。