持ち家の方の多くは、子供たちが巣立ったあとの夫婦二人の生活で「二人で住むには自宅が広すぎる」と感じるようです。
2013年7月に矢野経済研究所が60歳以上のシニアの方に対して行った住居に関する調査によると、「戸建住宅の部屋を活用し切れていない」と感じている方の割合が、子供の独立前は33.8%であるのに対して、独立後では81.9%となっています。また、家の老朽化やバリアフリーの必要性などで自宅に対して不満を持つ方もいるようです。
購入時は広めの間取りを求めて郊外に引っ越してきたものの、子供が巣立った今、夫婦だけで使うには持て余す。加えて将来、子供たちが相続しても使い道に困りそうだという場合には、早い段階で活用方法を考えておくことが大切です。
そこで今回は、戸建住宅をご所有の方で将来の使い道に不安な方、また、今お困りの方のヒントとなる活用方法についてご紹介したいと思います。
複雑に頭を悩ませる必要はありません。持ち家の活用方法は大きく分けて3つで、「売却」「賃貸」「建て替え・改修」のどれかになります。それぞれのパターンについて具体的にどのような方法があるのかを見ていくことにしましょう。
1. 自宅を売却する方法
まずは、持ち家を売却する方法です。
持ち家を売却する大きなメリットは、売却代金でお金を得られることでしょう。老後のお金の準備のために、これまで住んでいた自宅を売却し、老後の生活費にあてたい。そう考える人も多くいます。売却代金を新しい住居のために使用することもできます。
また、その持ち家の不便なところについて思い悩まなくてもよくなるのも、売却のメリットのひとつと言えます。一戸建ての家を維持するにはお金が掛かりますし、築年数が古くなればその分修繕費も多く掛かります。そういうわずらわしさから開放されるのもまた、売却のメリットでしょう。
ただし、せっかくの保有不動産を手放してしまうことになる点や税金対策などをしなければならない点はデメリットといえます。また、想定どおりの価格やタイミングで売れないリスクも考えられます。
持ち家である自宅を売却した場合、次の住処を検討する必要があります。そこで、売却した後は次のような選択肢が考えられます。
(1) マンションなどを購入する
まず、持て余していた自宅を売却して、適度な広さのマンションなどを改めて購入することが考えられます。懸念される購入資金は、自宅の売却代金をあてることもできます。
また、中古物件を上手に活用したいところ。中古物件であれば値段も安く、購入時に設備や間取りを確認することもできますので、新築を購入するよりも条件に合致した物件を探しやすくなります。
ただし、住宅ローンが残っている場合、残債の返済や抵当権抹消の可否によっては売却が容易でないことがあります。また、自宅の売却益が出た場合には譲渡所得として課税される可能性があるため注意が必要です。
(2) マンションなどを賃借する
マンションなどの新居を賃借するのも、選択肢のひとつです。
もっとも手間がかからず、ライフステージに応じて、臨機応変に対応できるのがメリット。物件の間取り・設備に不満が出たときにでも、容易に引越しすることができ、住み替えられるのが強みです。
ただし、(1)と同様、売却が容易でない場合があるほか、買い換えの際には利用できる可能性のある「特定の居住用財産の買換え特例」(譲渡所得に対する課税の繰り延べ)が使えない点に注意が必要です。
(3) 高齢者施設に入居する
年齢などによっては、新居としてマンションなどを賃借するのではなく、高齢者施設に入居するという選択肢も考えられます。
サービス付き高齢者向け住宅やケアハウスから特別養護老人ホームまで心身の状態に応じて、適した施設を選ぶことがポイントとなります。
日常生活や介護などの不安を軽減することができる一方、条件に合った施設でも時期的に空きがないことがある点や、通常の住居より多額の保証金やコストがかかる点で、計画的な準備が必要といえます。