2月の大きなイベントのひとつといえばバレンタインデー。チョコレートは大昔から多くの人に愛されてきました。
ダイエットを志す人が増える中で消費量は一時減少傾向が見られた時期もありましたが、独特の健康効果が見直されたことで、消費量は再度増加しつつあります。
チョコレートに特別な機能を付加した商品も登場しており、健康効果で選ばれる時代が来たという見方もできそうです。
チョコレートの歴史
チョコレートの歴史は古く、紀元前2000年、中南米で、すりつぶしたカカオ豆が食されていたそうです。当初は豆を生で食していましたが、その後ローストしたものをすりつぶして飲用するようになりました。
アステカ帝国の皇帝も不老長寿の薬として愛飲したと言われており、栄養食品として珍重されたカカオ豆は、通貨と同様に扱われたとも伝えられています。
16世紀にはヨーロッパに伝えられ、砂糖を加えて飲む利用法が貴族の間で流行り、19世紀にはカカオ豆から搾った油脂成分に砂糖を加えて固める、現在のようなチョコレートが作られるようになりました。
栄養価と味わいで古くから愛されてきたチョコレートですが、近年は「太る」「消化に悪い」などの懸念から敬遠されがちでした。
研究で発見!チョコレートの健康効果とは
最近になって、チョコレートには独特の健康効果があることが、さまざまな研究の結果からわかってきました。
2014年に愛知県蒲郡市・愛知学院大学・株式会社 明治の産官学の共同で行った実証実験では、毎日一定量のチョコレートを摂取することで、血圧やコレステロール値、動脈硬化や酸化ストレスなどの指標が改善されることが報告されています。
参照元:チョコレート摂取による健康効果に関する実証研究 中間報告|みんなの健康チョコライフ
血圧が高い人ほど、最高血圧・最低血圧ともに有意な低下が見られました。カカオ成分を多く含むチョコレートを4週間にわたって食べた後は、食べる前に比べて「ピーク値(もっとも高くなる時の数値)」が低下することが確認されたのです。
血圧は暮らしの中で時々刻々と変化しています。健康リスクをもたらすのは主にピーク時なので、それを抑えることはさまざまな病気の予防につながります。
大澤教授の研究によると、血管のトラブルにつながるコレステロールの状態についてもカカオポリフェノールで改善する様子が報告されました。一般に善玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロールが増え、酸化すると血管を詰まらせる悪玉コレステロールの酸化を抑えるはたらきが観察されたのです。血管の状態改善は動脈硬化を軽減し、心臓病や脳血管性疾患の抑制につながります。
さらにチョコレートを食べると脳の神経細胞の増殖に必要な栄養素(BDNF)が増えることも報告されました。BDNFは加齢とともに減少するため、補うことでうつ病やアルツハイマー型認知症の改善につながる可能性も指摘されています。
健康効果を増進させる「機能性チョコレート」
大きな健康効果が期待できるチョコレートですが、健康効果をさらに増進する機能を盛り込んだチョコレートが最近人気を博しています。その代表格といえるのが、カカオの含有量を高めたハイカカオチョコです。
ハイカカオチョコに明確な定義はありませんが、一般的に「カカオマスやココアバターといったカカオ由来成分を70%以上含むもの」がそう呼ばれています。通常のチョコレートは30~40%程度なので、2倍程度のカカオが含まれていることになります。
「カカオポリフェノールを多く含むチョコレートを1日25グラム以上摂取する習慣が健康につながる」と大澤教授も推奨しています。
ただそうは言っても「チョコレート = 太る」というイメージが強く、日常に取り入れるのには抵抗があるかと思います。そんな時に役立つのが脂肪や糖の吸収を抑える作用がある難消化性デキストリンを含むチョコレートです。
消化器系への効果に注目した商品では、チョコレートで乳酸菌をくるんだ商品もヒットしました。消化しにくいチョコが胃酸から守ってくれるため、乳酸菌が腸に届きやすいのが特徴です。
他にも、ストレス軽減効果があるγ-アミノ酸(GABA)を加えて、ストレス低減効果をうたうチョコレートなども登場しています。カカオにもともと豊富に含まれているGABAをさらに増量することで、ある種のストレスを低減するとされています。
より高い健康効果を期待できるチョコレートの選び方
多種多様なチョコレートが店頭に並ぶ中、本当に健康によいものを選ぶのは簡単ではありません。
そこでヒントになるのは「機能性表示食品」などの表記です。特に健康増進効果を付加した商品については、この表記があるかどうかが判断の基準になり得ます。
「機能性表示食品」はメーカーがエビデンスとなる資料を添えて消費者庁に有効性や機能性を届け出た商品です。健康増進効果を付加した商品の一部には「機能性表示食品」があるので、そちらを選んでみるのもよさそうです。
もちろん食べすぎるのはNGです。チョコレートはカロリーが高いため、メタボリック症候群などの健康問題を招きかねません。
またチョコレートにはカフェインや、カフェインに似たはたらきをするテオブロミンと呼ばれる成分が多く含まれていることがあります。カフェインやテオブロミンには神経を興奮させる作用があるため、寝る前に食べるのは避けた方がよいかもしれません。
まとめ
大昔には健康食品として珍重されていたチョコレートですが、その後は豊かな香りと味を楽しむ嗜好品として利用され、そして近年では再度、健康効果が注目されています。
新たな歴史の流れといえそうですが、くれぐれも食べ過ぎにはご注意ください。