弁護士が語る資産整理を家族でデザインする大切さ!家族集まる年の瀬こそ話すべき内容とは

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自分のモノは家族のモノ。何を持って何を持たないのか、家族でデザインする時代

ある法律相談会でのこと。品のいい初老の女性が相談に来られました。
なんでも、数十年前、父親が亡くなった時に、遠くの田舎にある土地を相続したとのこと。

当時は、不動産は価値ある財産だし、子どもたちの誰かがいつか利用するかもしれないと思ったとのこと。でも、彼女の子は全員女性で、それぞれ結婚して独立し、遠くにある不動産なんていらない、といわれてしまったそう。

数年前夫に先立たれ、自分名義となった自宅もある。こうなってみると、毎年の固定資産税が負担に思えてきた。だから、もうこの土地はいらない。業者に売却を依頼したが全く売れない。この土地を放棄できないでしょうか...そんなご相談内容でした。

あまり知られていませんが、土地を自由に放棄することはできません

過去に元首相の土地が相続税のかわりに「物納」されたなどのニュースがあったせいか、「土地はいざとなれば国や自治体が引き取ってくれるんじゃないか」と思っている方が多いですが、現実には、国や自治体も、価値のない土地を引き取りません

ですから、その時の女性に対しては、今土地の放棄はできないですが、女性に万一のことがあった時、娘さんが相続放棄することは可能ですよ、とその手続についてお伝えしました。

ところが、この女性、他にも自宅をはじめ色々と財産を持っていて、相続放棄は適当でなく、この「要らない土地」だけを手放すのは結構大変と思われました(相続放棄では、要らないものだけ選んで放棄することはできないのです)。

帰り際に彼女が漏らした「父から相続する前に、子ども達と一緒にもっとちゃんと考えればよかった」という言葉が印象的でした。

物を持つのにはコストがかかります。主役は物ではなく、それが帰属する人です。

不動産に限らず、資産はたくさんあるほど良いと思う人も多いと思います。テレビでよく有名人のお宅に壁一面並んだカバンや靴のコレクションが紹介されますが、物の所有は豊かさの象徴のように思えますよね。

でも、物を持つのには冒頭の例の税金のように案外コストがかかります。また、豪邸でもない限り、多すぎるコレクションは、家中を占領してしまい、一番大事な家族の生活に窮屈を強いることにもなりかねません。

実際にこんな事例がありました。

多重債務に苦しんでいる中年の女性の依頼者でしたが、自分が親からもらった7段飾りのひな人形や、着物を捨てるに捨てられず、住んでいたマンションに保管しきれなくなりました。

その結果、彼女は、借金の返済に苦しみながらも、さらに月額2万円のトランクルームを借り、生活をますます苦しくしていたのです。

その女性には同居する成人した娘さんがいましたが、娘さんは内心7段飾りのひな人形なんて欲しくもないと思いながら、貯金を切り崩して母との生活を維持していました。

こうなると、一体誰のためのモノなのか?と思ってしまいますよね。幸せを願い母から娘に引き継がれるひな人形が、娘にとっては重荷になってしまっていたわけです。トランクルームの中でひな人形が泣いているような気がしました。

この依頼者には、「まず家族の暮らしが第一ですよね」とお話しし、ひな人形などを処分しトランクルームの契約解除をするよう説得するところから始めました。

不動産も動産も、所詮は物です。主役はその物が帰属する「人」なのです。
特に、家族がいる場合、物の所有は今の暮らしや将来の相続などで、家族の生活にも大きな影響を与えます。

だからこそ、資産の形は、あくまでも「人」を軸にして決めていくべきです。

家族が今どんな暮らし方で、どんな気持ちでいるのか。そのために何が必要で何が不要なのか。そして、それをどんな形で持つのがベストか。これらについて家族が互いに話をし、考え、最善の結論を決めていく。

つまり、家族の資産は家族みんなでデザインしていく、そんな時代なのではないかと思います。