現代のお墓事情、供養方法まとめ。宇宙葬やスマホでのお墓参りとは

  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア

近年の社会情勢や人々のライフスタイル、価値観の変化にともない、お墓のあり方も変わってきています。遠方に住んでいてなかなかお墓参りにいけない人も増えています。

一方、永代供養や納骨堂、あるいはスマホで供養ができるお墓など、さまざまな種類の新しい供養方法が編み出され、活用する人も増えてきています。

今回は近年増加しているお墓に関する問題点と、新しい供養のスタイルについてご紹介します。

急増する無縁墓に墓じまい

何らかの事情があって遺族がお参りできていない、手入れができていない「無縁墓」が増加しています。

すでに埋葬されている遺体や遺骨を別の墳墓に移して供養すること「改葬」といい、厚生労働省が発表した『衛生行政報告例』によると、過去10年の「無縁墳墓等の改葬」の平均は年間3,500件あったといいます。

お墓を維持する代わりに別の方法で供養する「墓じまい」も増えています。前述の『平成29年度衛生行政報告例』によると、お墓に埋葬されている遺骨を別の墳墓に移したり、他の方法で供養したりする「改葬」は10万件にも上ります。

特に近年ではお墓を閉鎖する代わりに納骨堂で永代供養を行う人が増えてきていて、大手の石材店では年間100件以上もの墓じまいの相談が寄せられていると言われています。

なぜ無縁墓や墓じまいが増えているのか?

かつて、各家庭にお墓があって、定期的にお墓参りやお墓掃除に行って、ご先祖様を供養するというのが当たり前でした。それがいま、なぜ無縁墓や墓じまいが増えてきているのでしょうか。

要因のひとつとして挙げられるのが、家族形態の変化です。かつては主に長男あるいは長女が地元に残って実家を守り、お墓を維持するというのが一般的でした。

しかし少子化が進んだ近年は、長男長女も地元を離れて就職し自分の家庭を築く人が増えたため、先祖のお墓参りや手入れに行きたくてもなかなか行けないという状況が考えられます。

上記の事情を背景に、地元を離れた人を対象にしたお墓の掃除代行サービスが今、人気を呼んでいます。清掃会社や葬儀会社、石材店などの専門業者が墓石磨きや花立ての手入れ、区画の除草、落ち葉拾いなどのお墓掃除を代行。お寺や霊園事務所への挨拶や、墓前への合掌も行い、儀礼もしっかり尽くしてくれます。

掃除のプロに依頼することで、自分たちで掃除するよりもお墓が美しくなります。費用は1回あたり8,000円~3万円ほど。定期的にお墓掃除をしてくれる年間契約ができる業者もあります。

お金に余裕があれば、こうしたサービスを活用することでお墓を維持できます。しかしなかには、経済的な理由によってお寺の檀家料や管理費用などを支払えなくなり、やむなくお墓を放置、墓じまいをせざるを得なくなってしまったという人もいます。

また「家族全員が同じお墓に入る」「お墓を守る」という従来の価値観や考え方が薄れてきている傾向もあります。「子どもには面倒をかけたくない」「無理してお墓を作らなくても良い」と考え、お墓ではなく永代供養や納骨堂を選ぶ高齢者も増えているのです。

散骨粉骨代行サービスを提供するINORIによると、お墓をもっていない人のうち、新たにお墓の取得を希望している人の割合は東京で3割、大阪では2割弱という意識調査結果が出ています。年々お墓を不要としている人の割合は大きくなっているそうです。

お墓が不要?新しい供養の方法とは?

さまざまな理由でお墓の維持ができなくなってきている現状ですが、亡き人を供養する、ご先祖様を大切にするという気持ちが薄れているわけではありません。お墓を作らない、新しい供養の方法も誕生しています。

永代供養

お寺や霊園などがお骨を預かって永代に渡って供養方法です。個別のお墓ではなく、供養塔や共同のお墓に入ります。

「墓石安定型」という従来のお墓に永代供養が加わったものや、一定期間墓石を建てて供養し、その後に合祀する「個別安置型」など、さまざまな種類があります。

お寺や霊園が17回忌、33回忌などの供養を遺族に代わって行ってくれますので、無縁仏になる心配は不要です。供養塔やお墓の管理もお寺や霊園が行いますので、お墓掃除に行く必要もありません。

費用は数万円~数100万円とかなり差が大きく、特に東京では50万円~300万円と、それなりにお金がかかります。

納骨堂

お寺や霊園にあるロッカー形式あるいは機械式の納骨堂にお骨を安置します。墓石が不要なため、特に土地が少ない都市部では納骨堂を選ぶ方が増えてきています。従来のお墓は「一戸建て」、納骨堂は「マンションやアパート」とイメージするとわかりやすいでしょう。

前述の永代供養と同様、お寺や霊園が供養をし、日々の管理も行ってくれます。ただし、33回忌など、一定の期間を過ぎると屋外の共同墓や供養塔に合祀となるケースもあります。費用は50万円~300万円ほどです。

手元供養

お墓や合祀、納骨堂ではなく、自宅のお仏壇にお骨を納める供養方法です。手元供養用の骨壷や、その骨壷を収められる仏壇なども販売されています。

仏壇を買うとなると数10万円~数100万円かかりますが、すでに仏壇がある場合は費用がかかりません。近年ではマンション向けの「ミニ仏壇」も人気で、費用も数千円~数10万円。骨壷も数万円が相場。従来のお墓はもちろん、永代供養や納骨堂よりも大幅に負担が少ないです。

自宅にお骨があるので故人を身近に感じられるというのも人気の理由です。

散骨

海や山、空などに遺灰をまいて供養します。費用は10万円~30万円程度。お墓を建てませんので、手元供養と同様に費用を大幅に抑えられます。

主に故人が希望されることが多く、生前に「自分の骨は海に散骨してほしい」と遺言で遺すケースがあります。ただし、個別墓や合同墓、納骨堂など特定の場所に供養されるわけではないので、山に散骨した場合は、山全体がお墓になるようなイメージです。