地域包括ケアシステムの特徴と問題点

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懸念される地域格差とボランティア依存

しかし、地域包括ケアの問題点として、次のような指摘もあります。そのひとつは、地域それぞれの取り組みに任せることによる"地域格差"の発生です。

高齢化率の進展や、要介護・要支援認定者数などには地域ごとに開きがあり、また「自助」や「互助」がどこまで手厚くできるかは、地域の財政力や人的資源、インフラ、政策次第となります。地方の中小の市町村と大都市圏で受けられるサービスに大きな差が生まれる可能性があり、より優れたサービスが受けられる自治体へと高齢者が転居することも考えられます。

もうひとつの問題点は、地域で助け合う「互助」を掲げているものの、地域のコミュニティが失われてしまっているところが少なくないということです。

核家族化が進み家族や親族などの距離が遠くなり、さらに近隣の絆も薄くなっているなかで、こうした高い理想がリアリティをもちうるかどうか。さらに地位包括システムは「ボランティア、NPO、社会福祉法人、企業、自治会、老人クラブなど様々な主体が生活支援に取り組む」としていますが、ボランティアをあらかじめ重要な担い手として想定することが、果たして政策として有効かという指摘もあります。

地域のコミュニティを作り直すことから

地域包括ケアシステムが、実際に地域に根付き、制度として発展していくためには、地域のコミュニティそのものを再生する取り組みが進められなければなりません。

国では2014年度より、自立した生活を送ることが困難な低所得・低資産の高齢者を対象に、空き家などを活用した住まいの支援や見守りなどの生活支援を行う「低所得高齢者等住まい・生活支援モデル事業」に着手しています。

2015年度は12自治体が活動を展開。空き家などのリフォームやコンバージョン(用途変更)が必要な場合は、国土交通省の補助金(「住宅確保要配慮者あんしん居住推進事業」)の活用もできるとされています。(詳細はこちらのホームページにあります)

補助事業の利用には制約もありますが、その利用の如何を問わず、空き家などを活用しながら地域に開かれたコミュニティづくりを進めていくことが、地域社会における介護を支える基盤になるのではないでしょうか。

一般の住宅や賃貸住宅の外構や庭づくりなどにおいても「街に開く」ことは可能であり、そこから新たな会話が生まれます。小さくてもできることから着手し、地域の豊かなコミュニケ-ションを創造していくことが必要になっていると思います。