2022年の民法改正で知っておきたい「相続」に関する7つの変更点

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相続の円滑化

遺産分割前に生活費を引き出し可能に

これまで、相続が発生すると金融機関の口座は凍結され、預金の引き出しには相続人全員の署名と印が必要でした。そのため、葬儀代などの必要経費は誰かが立て替えたり、配偶者は生活費を引き出せなかったりするなどの不便がありました。

今回の改正で、一部の相続人からの申し出によって預金が引き出せるようになります。これにより、葬儀費用や遺された配偶者の生活費なども被相続人の口座からスムーズに支払うことができます。なお、引き出せる上限額はこれから決定される予定です。

被相続人の介護や看病で貢献した親族は金銭請求が可能に

これまで相続人以外の親族は相続を受けられませんでした。また、被相続人を生前に介護・看病した相続人が、その貢献度に見合った相続額の増額を主張しても、他の相続人が納得しなければ認められませんでした。

たとえば親と同居する三男の妻が介護などで苦労したとしても、相続財産のうち夫である三男の取り分が介護貢献の寄与分として評価されることはありますが、妻自身が相続によって財産を取得することはできません。

今回の改正で、被相続人の介護・看病で貢献した親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)は、相続人ではなくても金銭請求が可能になります。これにより、親族間での介護や看病が円滑化することが期待されています。

自筆証書遺言の要件緩和

旧:自筆証書遺言 新:自筆証書遺言
気軽に、秘密裏に書ける。紛失・廃棄や「こっそり書き換え」リスクがある。 法務局に預けられる。紛失・廃棄や「こっそり書き換え」リスクなし。
文章・目録ともすべて自筆。誤字・脱字や署名捺印など不備の可能性。 財産目録のワープロ作成OK(要本人サイン)。誤字・脱字や書式の不備が減る。
検証が必要。 検証が必要になる。
費用は特に不要。 費用が安い。相続額にかかわらず、印紙代数百〜数千円程度。

自筆証書遺言が法務局で保管可能、検認が不要に

遺言には、「公正証書遺言」「自筆証書遺言」の2種類があります。

公正証書遺言は、公証役場の公証人の元で証書を作成し、原本を公証役場に保管する方式です。確実に遺言が遺せる反面、「作成に時間がかかる」「証人2名の立ち会いが必要」という点で不便です。

一方の自筆証書遺言は、自分でいつでも作成できて費用もかからない反面、自宅で保管するために紛失や偽造のリスクがありました。加えて、遺言内容のチェックと偽造されていないかの確認のために「家庭裁判所の検認」を受けなければならず、この検認に1ヶ月程度の時間がかかるというデメリットもありました。

今回の改正で、自筆証書遺言を法務局に預けることができるようになり、紛失・偽造されるリスクが減ります。また、家庭裁判所での検認が不要になりますので、検認作業にかかっていた時間が短くなり、より迅速に相続手続きができます。

自筆証書遺言を法務局に預ける際の保管料はまだ決まっていませんが、公正証書遺言の作成よりは格段にコストが下がると予想されています。

自筆証書遺言の財産目録をパソコンで作成可能に

遺言書には遺言の本文と、全財産を記した「財産目録」が必要です、これらすべてを手書きで作成する必要がありました。

今回の改正により、財産目録をパソコンで作成できるようになります。目録作成・修正がより簡単になり、自筆によるミスも減ることが期待されます。

財産目録には例えば、預貯金や不動産、有価証券、借金、その他自動車や宝石類、生命保険金等の項目を記載します。

まとめ

今回の民法改正により相続分野が大きく変更され、長年連れ添った配偶者や被相続人に貢献した親族の権利がより正当に守られるようになりました。相続分野の変更は約40年ぶりのことです。

また、相続時に被相続人資金を凍結される不便さの解消や、遺言書類のPC作成を認めるなど、より社会の実態に即した改正内容となっています。相続手続きがより円滑に進み、相続人がより正当な権利を得られることでしょう。