急速な高齢化が巻き起こす重大課題とは!介護と仕事の両立に注目が集まる

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高齢者1人を現役世代2、3人で支える時代

急速な社会の高齢化は、これからの日本にどのような課題・問題を提起しているでしょうか?

その一つは、人口構成が大きく変化し、生産年齢人口(15歳~64歳)に対して65歳以上の高齢者人口が増えていることです。

出生数を見ると、2015年は100万5,656人(ちなみに1948年の出生数は268万1,624人でした)。出生数は今後も減少を続け、2060年には、48万人にまで減ると推計されています。当然生産年齢人口も減少し、2015年の7,785万人から2027年には6,980万人、2060年には4,418万人となると推計されます。

1950年には1人の高齢者に対して12.1人の現役世代(15~64歳の者)がいたのに対して、2015年には高齢者1人に対して現役世代2、3人になり、今後も高齢化率は上昇を続けることから、現役世代の割合はさらに低下。2060年には、1人の高齢者に対して1.3人の現役世代という比率になると予想されています。

年金や健康保険などの社会保障制度は、基本的に現役世代の負担で成り立っています。高齢化率の上昇による人口構成比の劇的な変化は、こうした制度運用に大きな困難をもたらすことになります。

また、今や総世帯数の半分を占める高齢者単独世帯に対して、いかに安全・安心の住環境を整備するか、これも大きな社会的な課題となっています。

年金だけでは老後が過ごせない

社会の高齢化に伴うもう一つの問題は、介護。とくにその担い手と費用についてです。

厚生労働省の最新の「介護保険事業状況報告」によれば、介護保険制度のサービスを受給した65歳以上の被保険者は、2015年1月で488万4,000人。保険給付は総額で、9兆5,783億円にものぼっています。

介護が必要になった場合の費用負担について、60歳以上の人に尋ねた内閣府の調査によれば、「特に用意しなくても年金等の収入でまかなうことができると思う」が42.3%、「貯蓄だけでは足りないが、自宅などの不動産を担保にお金を借りてまかなうことになると思う」が7.7%、「資産の売却等でまかなうことになると思う」が7.4%、「子どもからの経済的な援助を受けることになると思う」が9.9%、「その場合に必要なだけの貯蓄は用意していると思う」が20.3%となっています。

6割の人が年金だけではまかなえないと考えており、年金でまかなえると回答している人についても、今後長寿化が進めば介護等の費用はさらにかさむことになり、また、年金財政の将来にも不安がつきまとっていることから、年金では不足するという人が増えることが予想されます。

「長寿による老後破産」などの言葉も現実味を帯びてきており、介護費用をどう捻出するかということが、大きな社会問題になっています。

老老介護の不安

さらに問題は、介護の担い手についてです。具体的にみてみましょう。

要介護者からみた主な介護者の続柄では、6割以上が同居している人で、主な内訳をみると、配偶者が26.2%、子が21.8%、子の配偶者が11.2%となっています。

また、性別については、男性が31.3%、女性が68.7%と圧倒的に女性が多く、介護者の年齢についてみると、男性では69.0%、女性では68.5%が60歳以上。いわゆる「老老介護」のケースも相当数存在しています。

しかし、家族、とくに高齢の女性に頼った介護は、当人に大きな精神的・肉体的な負担を強いるものであり、うつ病などを引き起こすきっかけともなっています。社会や地域全体でいかに介護を支えるかが大きな課題として浮かび上がっています。

介護のために貴重な戦力を失う企業

「高齢社会白書」によれば、家族の介護や看護を理由とした離職・転職者数は2011年10月から2012年9月の1年間で101,100人でした。

とくに女性の離職・転職者数は、81,200人で、全体の80.3%を占めています。また、男女・年齢別にみると、男女共に50代及び60代の離職・転職がそれぞれ約7割を占めています。

介護を機に仕事を辞めた人の5割以上は、仕事を「続けたかった」としています。

実際、介護を機に離職した離職者に対してその理由を聞いた調査でも、男女とも6割以上が「仕事と手助け・介護の両立が難しい職場だったため」と答え、離職時の就業継続の意向についても、男女とも5割以上が「続けたかった」と回答しています。

さらに回答は「自分の心身の健康状態が悪化したため」(男性25.3%、女性32.8%)、「自分の希望として「手助け・介護」に専念したかったため」(男性20.2%、女性22.8%)、「施設へ入所できず「手助け・介護」の負担が増えたため」(男性16.6%、女性8.5%)と続きます。

離職したくなかった人がやむを得ず辞めて介護に従事しているのです。それは同時に、企業にとっても勤続年数の長い貴重な戦力の喪失につながっています。

求められる介護の担い手づくり

2015年10月、「一億総活躍国民会議」が設置され、翌月には「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策-成長と分配の好循環の形成に向けて-」が取りまとめられました。そこでは介護と仕事の両立を目指す、「介護離職ゼロ」に向け、介護する家族に対する支援や高齢者の自立に向けた支援が盛り込まれています。

介護休暇制度の充実などもその一つですが、地域における訪問介護の充実など「地域包括ケアシステム」の構築も大きなテーマとなっています。しかし、それらの実現はこれからの課題として残されています。