カジノ法案の今後を海外のカジノ戦略と依存症対策から学ぶ

世界で実施されている依存症対策

全従業員を対象として、ギャンブル依存症が疑われる者の言動に現れるサインを研修で指導。

従業員がそうしたサインに気付いた場合には、アンバサダーと呼ばれる依存症対応担当者へ連絡。連絡を受けたアンバサダーは、そのギャンブル依存症が疑われる者を別室に連れて行き、カウンセラーへ相談するようアドバイスをします。

シンガポールでは、カジノ管理法に基づき、カジノ施設を利用するシンガポール国民及び永住者から入場料を徴収しています。

入場料は24時間パスと年間パスの2種類があり、利用者は有効期間内であればカジノに入出場することができます。

入場時には、住民登録証、運転免許証等で本人確認をするとともに、そこに記載されている全ての国民に付与された個人識別番号を利用して、入退場時間を管理。滞在時間が有効期間を超えている場合は、追加の入場料を支払う必要があります。

利用者からの要請にて、カジノを利用する前に、利用者が設定した利用予定額をカジノ運営事業者が預かります。

カジノでの利用金額が預かっていた金額に達した場合は、最初にカジノ利用予定額を預けた時から 24時間以上経過した後でなければ、金銭を追加で預けることはできません。

また、カジノ運営事業者は、利用予定額に達した顧客に対してカジノ施設から退去するよう促します。

カジノ運営事業者は、カジノ施設入場者の本人確認を行わなければなりません。

その理由は、配偶者等からギャンブル依存症を理由にカジノ施設への出入りを禁止するよう要請があった者等の排除を確実に行うため。

入場に当たっては顔写真付きの住民登録証等で本人確認し、システムで確実に入場回数を管理できるようにしています。また、入場者に渡される入場券には入場回数が記載されており、入場者本人が自らのカジノ入場状況を把握できるようになっています。

カジノ運営事業者は、所定の場所（例えば ATMの周辺の目立つ場所など）に、問題賭博の症状及び全国問題賭博協議会等のフリーダイヤルの電話番号を記載した書面を掲示し、又は提供しなければなりません。

賭博問題の啓発を促進するためのポスターやアニメ等の動画を一般市民から募集。入選したものを予防広告に使用するようなイベントを実施しています。

また、広報啓発用資料として、青少年の学生に対する本やマンガや動画も豊富に用意し、積極的に活用しています。

カジノ運営事業者は、与信行為、小切手の現金化についてカジノ利用者が自ら制限できるようにするための措置を講じなければなりません。

カンウォンランドカジノでは、カジノ運営事業者がカジノ利用者に資金を貸し付けることが禁止されています。

一方、自らの資金を引き出すATMの設置等は禁止されておらず、カジノ施設内に ATMや銀行の出張所が設置されており、引出し金額の上限は設定されていません。

6週間の外来治療プログラムを行っています。1プログラムにつき、一人当たり2,700ドルの費用が掛かりますが、州の補助金とカジノ運営事業者等からの寄付等でまかなっています。

ギャンブル依存症の予防に関する広報啓発、ギャンブル依存症に関するヘルプラインの設置等を行っています。

このヘルプラインは24時間対応で、電話で基本的な相談を受けた上で、対象となる支部センター又は民間相談協力センターを紹介するようになっています。

2017年5月16日時点で、自民・公明両党は政府に総合的なギャンブル依存症対策を策定するよう求める法案をまとめ、今の国会での成立を目指している。

法案では「ギャンブル依存症対策の推進本部を設置し、具体的な対策を盛り込んだ基本計画」「3年ごとに依存症の実態調査」「依存性や治療するための専門的な医療体制の整備」「パチンコや競馬などの事業者に対する依存症の予防策」などを求めています。

まだまだ盤石とは言えない日本のギャンブル依存症対策。

諸外国の事例も取り入れながら日本において最適な対応策が実施され、IRとしての成功が果たせることが期待されます。