地主の立場から見る、よくある底地権トラブルと解決ケーススタディ

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土地を有効活用するには様々なパターンが考えられます。

自分でアパートなどを建築して賃貸経営を行うという方法もありますが、土地だけを貸して住宅や店舗などの用地として使用してもらう方法もよく見られるケースです。

その際に発生する「借地権」、「底地権」に関連してトラブルが起こることも、またよくある話です。

前回の記事「借地人の立場から見る、よくある借地権トラブルと解決ケーススタディ」では、借地権者(借地人)の立場からトラブルのケースを考えてみました。

今回は「地主の立場から見る、よくある底地トラブルと解決ケーススタディ」ということで、底地権者(地主)の立場で具体的なトラブルの事例を紹介してみたいと思います。

一時使用を認めていた土地に立派な建物を建てられた場合(Jさん)

地主のJさんは、隣接する建設現場のためのプレハブ事務所を建てることを目的として、個人事業主Kさんに2年間の約束で土地を貸していました。

Jさんは、この土地に行く機会はあまりありませんでしたが、久しぶりに近くを通りかかりました。すると、当初は仮設のプレハブだった事務所が、今は立派な建造物になっていることに気付きました。

まもなく契約期間の2年となりますが、地主のJさんはKさんに対して土地の明け渡しを要求できるでしょうか。

借地借家法の保護対象になってしまう可能性も

一般に、臨時施設など一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合には、借地借家法のうち存在期間や更新などの規定の適用はありません

そのため、地主のJさんと個人事業主のKさんとの間で土地賃貸借契約を締結しており、契約書に一時使用であることが明確に記載されていれば、Jさんは原則として契約期間の終了とともにKさんに対して土地の明け渡しを請求することができます

この例からわかるように、一時使用の場合は、最初に契約書で内容を明確にしておくことが重要になります。

また、建物を建築し始めているのに特にそれを阻止していない場合には、土地利用を了承していると認定され、借地借家法の保護対象となってしまう可能性もあります。

そのため、地主としては必ず借地人に対して異議を述べ、契約の解除を申し出るなどの方策を取る必要があります。

木造建築から鉄筋コンクリート建築に改築された場合(Lさん)

地主のLさんは、木造住宅の宅地として、会社員のMさんに土地を賃貸していました。

Mさんからは地代の延滞などもなく、しばらくこの土地を訪れる機会もありませんでした。

しかし、あるとき、Lさんが土地の様子を見に行った際にMさんが木造の建物を鉄筋コンクリート建築に建て替えしていることを発見

Lさんとしては、無断で改築されたことに対して不信感を持っており、土地賃貸借契約を解除したいと考えています。

増改築の禁止特約がないと解除は難しい

本来、木造住宅のような非堅固な建物を鉄筋コンクリートのような堅固な建物に建て替えることは、土地貸借の条件変更となり、契約解除の原因となります。

しかし、実務上、契約解除が認められるかどうかは諸事情を考慮して判断されるため、一概には決められない面もあります。旧借地法では堅固な建物と非堅固な建物の区別がありましたが、現行の借地借家法ではこのような区別もありません。

この事例で、地主のLさんが契約を解除し、Mさんに対して土地の明け渡しを要求できるかは不明確なところがあります。

そこで、このような無用なトラブルを防止する意味でも、土地賃貸借契約書に「増改築禁止の特約」を入れておくことが得策といえます。

また、増改築する際の承諾料についての条項を入れておけば、承諾料を支払えば増改築ができることが明確になり、底地権者、借地権者双方にとって取引を円滑に進めることができるというメリットがあります。

借地人に契約違反があった場合(Nさん)

地主のNさんは、6年前から飲食店舗の用地として、店主のOさんに土地を貸しています。

Oさんの店の経営がうまくいっていないためか、2年ほど前から地代の支払が遅れがちになり、半年前から地代未払の状態が続いています。

地主のNさんとしては、Oさんが地代の支払債務を履行していないので、契約解除をしようと考えています。

契約違反で解除できるかどうか

一般に、地代の滞納が継続する場合は、借地人の債務不履行を原因として契約解除ができます

その場合は、一定期間を定めて催告をし、催告期間内に支払がなければ解除をするという流れになります。この場合の催告や解除の通知は内容証明郵便で行うのが一般的です。

事例の場合、地主のNさんはOさんに対して契約解除をすることが考えられます。しかし、Oさんに建物撤収や引っ越しのための資力がない場合、契約解除しても実効性に乏しいともいえます。

このような場合は、本来は不要である立退き料をNさんが支払って、Oさんに出て行ってもらうという方法もあり得ます。

訴訟を提起して判決を得れば、強制執行なども可能ですが、そこまでたどり着くには時間も費用もかかります。それよりは地主が立退き料を負担してでも、すみやかに土地の明け渡しをしてもらった方が良い場合もあるからです。

逆に、訴訟を起こすのであれば、先に建物について「占有移転禁止の仮処分」などを申し立て、建物が第三者の手に渡るのを防止する方策も合わせて検討すると良いでしょう。

まとめ

今回は特に底地権者(地主)の立場からトラブルとなり得るケースを取り上げてみました。

一般に、借地権は借地借家法などの法律で保護された非常に強い権利です。気になることがあれば、早めに弁護士などの専門家に相談しておくことが大切です。

「どのような場合に底地権者の権利が認められるか」、「どのような保全措置を取れば良いか」を知っておくことは、土地活用や賃貸経営においても有用といえるでしょう。

特集:不動産トラブルで多い借地・底地に関する問題と解決

第1回不動産トラブルの起きやすい「借地」と「底地」の基本まとめ
第2回借地権と底地権について、よくあるトラブルと解決法
第3回借地人の立場から見る、よくある借地権トラブルと解決ケーススタディ
第4回地主の立場から見る、よくある底地権トラブルと解決ケーススタディ【当ページ】