2025年、65歳以上の高齢者は3,657万人に
介護保険制度のもとで要介護者または要支援者と認定された人は、2014年度末で606万人です。
今後、65歳以上の高齢者数は、2025年には3,657万人となり、また、75歳以上高齢者の全人口に占める割合も増加を続け、2055年には、25%を超える見込みであることから、要介護者・要支援者の数がさらに増加していくのは確実です。
高齢者数と総人口に占める割合はさらに拡大
65歳以上高齢者人口(割合) | 75歳以上高齢者人口(割合) | |
2012年8月 | 3,058万人(24.0%) | 1,511万人(11.8%) |
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2015年 | 3,395万人(26.8%) | 1,646万人(13.0%) |
2025年 | 3,657万人(30.3%) | 2,179万人(18.1%) |
2055年 | 3,626万人(39.4%) | 2,401万人(26.1%) |
(出典・厚生労働省)
急がれる介護施設の充実
もともと高齢者の9割以上は在宅で暮らしています。調査によれば、介護保険の第1号被保険者 (65歳以上)のうち97%が在宅。また要介護の認定を受けた高齢者も約80%が在宅しています。
体の衰えなどにより要介護となり、家庭での生活の継続が難しくなれば施設への入所も必要になりますが、しかし、その施設整備は、急増する高齢者数に追いつくことができていません。
特に、比較的低額で利用できる「特別養護老人ホーム」は、表に見るように入所申込者数が52万人を超え、特に入所の必要性が高い要介護4、5で在宅という人が、8万7,000人も申し込みをして入所を待っている状態です。
特別養護老人ホームの入所申込者の概況(平成26年3月、厚生労働省調べ) 単位:万人
全体 | 在宅の人 | 在宅でない人 | |
要介護1〜2 | 17.8 | 10.7 | 7.1 |
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要介護3 | 12.6 | 6.6 | 6.0 |
要介護4〜5 | 21.9 | 8.7 | 13.2 |
合計 | 52.4 | 26.0 | 26.4 |
現在運営されている高齢者向けの住まいには、別表のようなものがあります。
有料老人ホームは施設数が急速に増え、また、費用も、月額30万円以上になることも少なくないなど、比較的高めであり、入居まで待たされることはほとんどありません。
地域を細かく限定しなければ入居は難しくありませんが、すでに入居率は8割を超えており、人気のある施設では入居待ちとなるケースも出ています。
主な入所型サービスの種類と特徴
種類 | サービス・特徴 |
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介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) | 寝たきりや認知症などで常に介護を必要とする高齢者に対して日常生活上必要なサービスを提供。入居待機者が多く、緊急度の高い高齢者から優先的に入所できる。 |
介護老人保健施設(老健) | 在宅復帰を目指している方の入所を受け入れ、リハビリテーションや必要な医療、介護などを行う。 |
介護療養型医療施設(療養病床) | 主に療養上の医療を必要とする方のための施設で病状が安定期にあり長期間にわたる療養や介護が必要な方に施設サービスを行う。 |
養護老人ホーム | 環境上または経済的理由により自宅で生活する事が困難な高齢者が対象。市町村が行う審査の結果により必要性の高い方から優先的に入所できる。 |
ケアハウス(軽費老人ホーム) | 家庭での生活が困難な高齢者が比較的低料金で食事や日常生活のサポートを受けることができる。介護が必要になった場合、在宅サービスを受けることも可能だが重度化で退去となる場合もある。 |
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) | 介護が必要な認知症の高齢者5〜9人程度がスタッフと家庭的な雰囲気の中で共同生活を行うことで残存能力を引き出し認知症の緩和を促すことを目的とした介護サービスを行う。 |
特定施設入居者生活介護(介護付有料老人ホーム) | 介護や日常生活上必要なサービスを行う。利用者は介護度に応じて一定金額で必要な介護を受けることができる。 |
在宅型有料老人ホーム | 日常生活上必要なサービスを行う。介護が必要となった場合、訪問介護等の在宅サービスを利用しながらホームでの生活を継続することができる。 |
サービス付き高齢者向け住宅 | 高齢者に配慮して設計された賃貸住宅で、介護が必要な場合は在宅サービスを受ける。食事サービス付き。また、高齢者の増加によりサービス付き高齢者向け住宅の供給が求められているため、「補助」「税制」「融資」の三方から国が支援策を展開している。 |
なお、介護施設としては、上記の他に「介護老人保健施設(老健)」と「介護療養型医療施設」があります。
ただし、介護老人保健施設は、在宅復帰を目的とした施設であり3か月で退去するのが原則です(状況により継続も可能)。また、「介護療養型医療施設」は2017年度末までに「老人保健施設」等に転換することになっており、新たに療養機能を強化した施設が設けられる方針が示されています。
急速に増えるサ高住
介護施設が不足する中、厚生労働省と国土交通省が共同で所管する「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)が、急速に数を増やしています。
国も介護施設不足を解消する重要政策と位置づけ、さまざまな優遇措置を用意して建設を奨励、今後10年間で60万戸を整備するとしています。
サ高住と呼ばれるのは、バリアフリー対応の賃貸住宅で、自立(介護認定なし)あるいは軽度の要介護状態の高齢者を受け入れることが基本です。生活相談員が常駐し、入居者の安否確認や生活支援サービスを受けることができます。
施設によりさまざまですが、外部の提供する介護サービスを受けることもできます。基本は賃貸住宅であり、利用権方式ではなく賃貸借方式で契約するので、入居一時金などを用意する必要がありません。
サ高住は社会的意義のある事業
サ高住は国からの手厚い建設補助が得られる点で、他の高齢者施設と大きく異なっています。
整備費の10分の1(上限あり)を国が直接補助するほか、所得税、法人税、固定資産税、不動産取得税が優遇されます。また、独立行政法人住宅金融支援機構の融資要件が緩和されます。入居希望者も多く、不動産ビジネスとしては有望なものといえるでしょう。
一般の賃貸住宅と異なり、建築地が駅から離れていても入居者を見つけることは難しくなく、また、第一種低層住居専用地域にも建築できます。もちろん、一般のアパート建設と同様、相続にあたっては、土地や建物の評価減も受けられます。
さらに、在宅介護で疲弊しているご家族に、比較的低価格で入居先を提供できるという社会的な意義もあります。
ただし、サ高住は提供するサービスの自由度が高いだけに、介護・医療に関連してどこまでのサービスを提供するか、最初の設計が非常に重要です。また、国の補助を受ける関係で、賃料設定に一定の枠が設けられるので、その点については、事前によく調査しておくことが必要でしょう。