間もなく解禁!期待高まる民泊新法の概要と仕組み

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検討会が最終報告書提出

訪日外国人観光客などの増加を受け、観光立国推進と民泊に関するルールの整備のため、「『民泊サービス』の在り方に関する検討会」が2015年11月に発足し、これまで全13回にわたって開催されました。今回は、検討会での議論を踏まえてまとめられた『最終報告書』について解説します。

民泊を住居専用地域でも可能に

最終報告書では、民泊について「住宅を活用した宿泊サービスの提供」と位置付け、「住宅を1日単位で利用者に利用させるもので、『一定の要件』の範囲内で、有償かつ反復継続するもの」と定義し、ホテル・旅館を対象とする既存の旅館業法とは別の民泊新法を整備するとしています。

新法では、民泊提供施設は住宅扱いとなるため、現行の都市計画法ではホテルや旅館が立地できない住居専用地域に立地する物件についても、民泊が実施可能となる予定です。

なお、民泊新法は、住宅や仲介業者を管轄する国土交通省と、ホテル・旅館を管轄する厚生労働省の共管とされる予定です。

民泊に課せられる「一定の要件」

新法では、民泊事業者は旅館業法の規制を受けることなく、住宅を1日単位で貸し出すことが可能となりますが、これを無条件に認めると、旅館業法の厳しい規制が課されるホテルや旅館の事業者が、民泊事業者に対して不公正な競争を強いられてしまいます。

そこで、新法では、ホテル・旅館事業者と民泊事業者の競争条件を公正に保つ「イコール・フッティング」の観点から、民泊を旅館業法の適用除外とする代わりに、「一定の要件」を設けることとされました。

この「一定の要件」として、最終報告書では、1年間で民泊営業可能な日数の上限を、半年未満(180日以下)の範囲内で設定することが挙げられています。具体的な日数上限は、今後の新法の制定過程で決定される予定です。

民泊新法の仕組み

民泊新法では、民泊の営業タイプを「家主居住型(ホームステイ型)」と「家主不在型」の2つに区別した上で、「住宅提供者」、「管理者」、「仲介事業者」それぞれに対して規制を課すことを検討しています。以下、最終報告書が提示する民泊新法の概要を説明します。

民泊新法が想定する民泊の2つのタイプ

家主居住型(ホームステイ型)に対する規制

「家主居住型」については、家主(住宅提供者)が、「住宅内に居住しながら(原則として住民票があること)、当該住宅の一部を利用者に利用させるもの」と定義され、適切な民泊サービスを提供するため、住宅提供者に以下のような義務が課される見込みです。

  • 民泊実施に当たっての行政庁への届出
  • 利用者名簿の作成・備付け(本人確認・外国人利用者の場合は旅券の写しの保存等を含む)
  • 最低限の衛生管理措置
  • 簡易宿所営業並みの宿泊者一人当たりの面積基準(3.3㎡以上)の遵守
  • 利用者に対する注意事項の説明
  • 住宅の見やすい場所への標識掲示
  • 苦情への対応
  • 住宅についての法令・契約・管理規約違反の不存在の確認
  • 無登録の仲介事業者の利用の禁止

後述の家主不在型と異なり登録管理者の介在が不要とされるのは、住宅提供者が民泊施設に居住していれば、利用者の滞在期間中も住宅提供者自らによる管理が可能であり、騒音、ゴミ出し等に関するトラブルが生じるリスクが低く、また利用者や近隣住民等からの苦情の申入先が明確であるためです。

住宅提供者による管理の可否が家主居住型と家主不在型を区別する根拠となっていますので、普段、住宅提供者が居住する住宅であっても、出張やバカンスにより不在とする期間中に民泊を実施するものについては、家主居住型には当たらず、家主不在型に当たると整理されています。

家主居住型については、住宅提供者が行政庁にインターネットにより「届出」をすることで、民泊を開始できるとされています。

家主不在型に対する規制(管理者規制)

「家主不在型」について、最終報告書では特段の定義はありませんが、文字どおり、家主が居住しない住宅を民泊に利用する営業タイプを指し、家主がまったく居住していない住宅に加え、出張やバカンスによる家主の不在期間中に住宅を貸し出すものについても、家主不在型と位置づけられています。

家主不在型民泊については、トラブル防止等の観点から、管理者に民泊施設の管理業務を委託することが求められます。これは、現在も事実上普及している、いわゆる民泊運営代行業を法制化したものと言えます。

そして、管理者には、前述の家主居住型の場合に住宅提供者に課されるものと同様の義務が課され、義務に違反した場合には、行政指導、行政処分、刑事罰の対象となります。

民泊施設の管理者となるには、行政庁への「登録」が必要とされています。現時点では、具体的な登録要件は決まっていませんが、最終報告書において、住宅提供者自らが管理者としての登録を受けて、その住宅を家主不在型民泊として提供することも可能としていることから、管理者は法人に限定されるものではなく、個人による登録も可能となるよう制度設計されるものと思われます。

なお、家主不在型の場合でも、住宅提供者は行政庁に届出をする必要があるとされています。

仲介事業者に対する規制

家主居住型、不在型を問わず、インターネット等を通じて民泊サービスを仲介する事業者(プラットフォーマー)については、行政庁による「登録」が必要とされ、消費者の取引の安全を図るため、取引条件の説明義務や新法に基づく民泊であることをサイト上に表示する義務等を課すべきとされています。また、仲介事業者には以下の監督規制を課すことが検討されています。

  • 行政庁による報告徴収・立入検査
  • 違法な民泊(無届の家主居住型民泊、登録管理者不在の家主不在型民泊、「一定の要件」に違反した民泊等)のサイトからの削除命令
  • 違法な民泊であることを知りながらサイト掲載している場合の業務停止命令、登録取消等の処分
  • 法令違反に対する罰則
  • 行政当局(保健衛生、警察、税務)の求めに応じた必要な情報提供

このとおり、仲介事業者規制は、民泊新法の実効性確保の有効な手段として期待されます。

しかし、日本国の行政権限は領土内にしか及ばないことから、国内に拠点がない外国法人に対して立入検査を実行したり、業務停止命令等の命令を遵守させたりすることは困難です。この点、最終報告書では、外国法人に対する取締りの実効性確保のため、法令違反行為を行った者の名称や違反行為の内容等を公表できるようにする氏名公表措置の導入が検討されています。

秋にも新法成立の可能性

最終報告書では民泊新法の骨格が示されたに過ぎず、「一定の要件」の具体的内容や、管理者及び仲介事業者規制の登録要件、仲介事業者規制と旅行業法との関係整理等、各論的なテーマについては、新法の制定にあわせて検討されることとなりました。

規制改革実施計画では、本年度中(2017年3月末日まで)に民泊に関わる法案を提出することとされており、早ければこの秋の臨時国会での法案成立が予想されます。今後の民泊新法の動向には引き続き注視が必要です。