ダムや橋などのインフラ施設で、見学や体験を楽しめる「インフラツーリズム」が今、観光ツアーとして人気を集めています。都心から日帰りで出かけられるスポットも多数あることから、首都圏を中心にそのブームが広がりつつあります。
かつては愛好家向けのマニアックな趣味というイメージのあったインフラツーリズムですが、国や自治体が積極的にツアーを整備してPRしたり、人気スポットがテレビで紹介されたことから、全国的に認知度が上昇。最近では、家族連れや女性グループが近場のインフラ施設を気軽に観光する姿も増えています。
夏の旅行プランを考えるこの季節、ぜひインフラツーリズムを考えてみてはいかがでしょう。今回は、その魅力や人気スポットを紹介します。
インフラツーリズムとは?
インフラツーリズムとは、既存または工事中のインフラ拠点を対象とした観光ツアーのことです。いまや北海道から沖縄まで、全国各地で実施されています。
実は、インフラツーリズムは海外からの旅行客を増やすために政府が推進している事業の一つでもあります。関連施設を数多く管理する国土交通省も、積極的な利用を勧めています。
一部有料のものを除いて、そのほとんどが施設内や構造部を無料で見学できるツアーというのも、国や自治体が行っている事業ならではの魅力のひとつと言えます。
全国にあるインフラ設備の見学・体験ツアー情報をまとめたサイトも、国土交通省によって開設・運営されています。現在、国土交通省が管理しているツアーは全国で約270か所。民間が実施しているものもあり、未掲載のものを含めると1,000件以上にも及びます。
人気のヒミツ、魅力を知ろう
大人も子供も夢中になれる、社会科見学
ダムや河口ぜき、港、下水道に溜め池や大きな井戸、高架道路などなど、ひと口に「インフラツーリズム」と言っても観光できるインフラ施設の種類はバラエティに富んでいます。
全国にあるそれらの構造物がどのように造られ、私たちの生活にどう関わっているのか?その裏側まで見られるのが最大の魅力といえるでしょう。
タイミングが合えば、工事中の現場をリアルタイムで見学できたり、既存の施設が実際に稼働する様子を目の当たりにできることも可能です。
かつて地域の生活を支えていた歴史あるインフラ施設も、史料として残されています。趣のあるスポットなら、世代を超えて楽しめます。施設の近くには資料館があることも多く、造られた目的や費やされた年月、技術などの背景を知ることで、よりディープにインフラ施設の世界にひたれるはずです。
壮大なスケール!"非日常感"を味わう
百数十メートルもの高さから水を放流するダムを見上げたり、数百メートルもある橋の塔頂に登って景色を眺めたり、百段以上もの階段を降りて地下トンネルに潜入したり......。
インフラツーリズムで訪れる施設には、日常のスケール感からかけ離れた、壮大な建造物が多いのも特長です。私たちの生活の基盤を支える"インフラ"施設ですが、実際に目の当たりにするとその壮大さに驚かされるというギャップを楽しんでみてはいかがでしょうか。
人気の定番スポット3ジャンル!
圧倒的迫力が楽しめる「ダム」
現実離れした大きさを楽しめるだけでなく、電気や水について学べる資料館も充実していることが多いのがダム。インフラツーリズムのなかでも代表的な人気施設です。特に暑いシーズンには、避暑感覚で涼しく観光を楽しめるメリットもあります。
日本一の高さを誇る「黒部ダム」(富山県)、観光放流が充実していることでダントツ人気の「宮ヶ瀬ダム」(神奈川県)、カヌー体験やライトアップなどのイベントがユニークな「長島ダム」(静岡県)をはじめ、全国各地に多数あります。
いつもとは違う顔が見える「橋・国道」
橋や国道というと、「普段の生活でも利用しているのに、わざわざ見に行くもの?」と思う方もいるかもしれませんが、インフラツーリズムでは、通常入ることのできない橋や高架道路の土台部分・塔頂の見学、点検の体験ができるスポットがあります。そのときにしか見られない国道の工事現場を見学するのも、貴重な思い出になるのではないでしょうか。
約10年かけて建設された世界最大級の「瀬戸大橋」(岡山県・香川県)、日本一長い信濃川に架かる重要文化財「萬代橋」(新潟県)、水上と陸上での工事を並行して行っている「環状2号線」(愛知県)など、こちらも全国に数多く存在しているので、調べてみる価値はあるでしょう。
非日常がいっぱい「下水道・放水路」
高さのあるダムや雄大な橋などに比べると、やや地味なように思われがちな下水道や放水路。しかし、こちらは非日常がたくさん味わえるという魅力があります。
映画やアニメのシーンでときどき出てくるような下水道を見学したり、管の洗浄を体験できる施設もあります。さらに、大雨による水害を防止するために作られた放水路では、巨大ながらんどうの空間に圧倒されますよ。
明治33年に完成して今も現役、レンガ造りがフォトジェニックな「仙台市 杜の都れんが下水洞窟」(宮城県)、実物大の下水道管に入ったり下水道にまつわる仕事を体験できる「虹の下水道館」(東京都)、まるで地下神殿のような調圧水槽を持つ「首都圏外郭放水路」(埼玉県)などがあります。
まとめ
インフラ施設は地域の生活に密着している存在なだけに、旅先で訪れればその土地の魅力をよりディープに堪能できるかもしれません。
せっかくならインフラツーリズムだけで旅行プランを組むのではなく、今年の夏の旅行先から近くにあるツアープランやスポットを探して、旅行日程に組みこむのがオススメです。
インフラツーリズムはダムや橋など高低差のある施設や工事現場など施設は普段入れない危険なエリアでもあります。特に子供連れで見学する際は、施設見学の注意事項をよく確認してガイドに沿ってお楽しみいただければと思います。