「人口」と聞くと、一般的には、少子高齢化と人口減少のイメージが強いと思います。しかし、新成人に限って見ると、2017年には123万人と前年比2万人の増加となっています。
そして不動産市場の動向を読み解くには、出生・死亡による人口増減だけでなく、転入・転出などの人口の社会増減も重要なデータの一つといえます。
首都圏の人口推移を見てみると、東京では転出超過となったものの、神奈川・千葉・埼玉では転入超過になっています。東京への転入者数は約2万7千人ですが、そのうち20 - 24歳が約7千人と最も大きな割合を占めることは特徴的といえます。その一方で、60歳以上のシルバー世代の人口も多いのが東京の特徴といえます。
新成人を中心とする世代では、進学や就職などのライフイベントにより、地方から都市部に移動する機会も増えます。そのため、首都圏への人口集中や住宅の需給にも大きな影響を与えます。
そこで、今回はこのような人口の社会増減の傾向を踏まえて、今後の住宅市場の動向を検証してみたいと思います。
地域ごとの人口推移
5年ごとに実施される国勢調査では、人口統計を公表しています。直近の調査である平成27年のものと、その前の平成22年の数値と比較し、人口推移の傾向をつかんでみましょう。
首都圏に人口が集中していると言われていますが、国勢調査の数字からもそれがわかります。
たとえば東京都では、平成22年から平成27年までの5年間で人口が1,315万人から1,351万人へと35万人の増加となっています。この傾向は神奈川県、千葉県、埼玉県でも見られます。
また、首都圏の中でも東京都に注目してみると、特に23区に人口が集中しています。
全国では、1億2,805万人から1億2,709万人と96万人減少していることから考えると、首都圏に人口が集中している傾向にあるとわかります。
都道府県別の世帯数
東京都における世帯あたりの人数が全国平均と比べて少ないことが、下記のような統計でも明らかにされています。
国立社会保障・人口問題研究所の『日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)』(2014年4月推計)によると、都道府県別の世帯数は次のようになっています。
2010年時点において、全国では5,182万世帯、東京都では638万世帯、神奈川383万世帯、千葉251万世帯、埼玉283万世帯となっています。
一世帯あたりの人員数が全国では2.42人であるのに対して、東京都では2.03人と低い水準にあり、単身世帯など人員の少ない世帯が多いことがうかがえます。
以上のことから、住宅の需要という面では、首都圏を中心に魅力的なマーケットを形成しているといえるでしょう。特に今後、単身世帯が高齢化していくことを考えると、そこに照準を合わせた投資戦略も有効かと考えられます。
次に、住宅供給のトレンドがどうなっているか概観してみましょう。
住宅供給のトレンド
2016年2月 | 2017年2月 | 差異 | |
総戸数 | 96.5 | 94.0 | △2.5 |
持家 | 29.1 | 29.6 | 0.5 |
賃貸 | 40.4 | 43.2 | 2.8 |
分譲住宅 | 25.9 | 21.3 | △4.6 |
住宅供給数は、近年、増加傾向にありますが、供給が過剰で価格が下がっているかというと、そのような傾向は見られません。
国土交通省の発表によると平成29年2月の住宅着工戸数は70,912戸となっており、前年同月比では2.6%減となりました。
ただし、内訳を見てみると、持家、貸家、分譲一戸建住宅は前年同月比で軒並み増加。分譲マンションだけが前年同月比35.7%減少となっており、これが全体の住宅着工数に大きく影響しているようです。分譲一戸建住宅は前年同月比0.9%増加ですが、これは16か月連続の増加ということになります。
また2017年1月に東日本不動産流通機構が公表した「首都圏不動産流通市場の動向(2016年)」によると、成約件数は中古マンション、中古戸建、新築戸建、土地ともに2年連続の増加となっています。成約物件価格も中古マンションで前年比5.4%増の3,049万円、中古戸建で前年比0.6%増の3,030万円と高い水準で推移しています。
これらの統計からわかることは、住宅の供給はおおむね上昇トレンドであり、価格も堅調に推移しているということです。
分譲マンションの着工に調整が入っているものの、戸建などを中心に活況は続いており、首都圏の底堅さを感じさせます。特に、中古マンション、中古戸建物件の価格が上昇傾向となっていることは、投資対象としても、居住用としても魅力のある分野といえるのではないでしょうか。
東京の地価はこれからも上がり続ける?
それでは、東京の地価は今後も上がり続けるのでしょうか?
まず、人口の動向に関していうと、東京に人口が集中する傾向は以然として続いています。これは、地価に与える影響としてはもっとも大きな要因ということができます。
具体的な住宅需要としては、東京の賃貸住宅の着工数が7.9%増となっていることからもわかるように、上昇トレンドは続いているということができます。東京では単身者世帯数が多いので、今後も単身者向け物件の需要が見込めるといえるでしょう。
つまり、特に賃貸市場は堅調に推移することが見込めます。
2016年における住宅の成約件数では中古が新築を上回っており、特に東京都区部では2桁の増加率となっています。したがって、住宅販売市場でも堅調な伸びが期待できます。
このような現状のトレンドを見る限り、今後も東京の地価は上がり続けると考えるのが自然といえそうです。
まとめ
これらの統計データからわかることは、若い世代が首都圏に転入する一方で、高齢化も進んでいるという点です。そのため、若い世代だけではなく、高齢者の単身世帯も増える傾向にあります。
また住宅供給トレンドを見てみると、首都圏では中古住宅の市場が今後も活発化することが予想されます。