賃貸住宅オーナーが抑えておくべきマイナンバー制度の10のポイント

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Q マイナンバー制度が、来年の1月から始まるって聞きました。それって何ナンバー?

A 今年の10月から、あなたに、12ケタの番号が届きます。

このマイナンバー制度は、生まれたばかりの赤ちゃんからお年寄りまで、国籍を問わず、日本全国の住民登録をしている生活者の一人ひとりに、市区町村長が12ケタの個人番号(マイナンバー)を指定することから始めます。

この個人番号の膨大な集積データは、複数の行政機関にある個人情報が同一人の情報であるかどうかを確認するための基盤として利用して、行政事務の効率化と透明化に役立てます。これが、社会保障と税の共通番号制度、通称はマイナンバー制度で、開始は来年(2016年)1月からです。

このごろ、亡くなった親の年金を、死後も長期にわたって不正受給する事件が相次いで起きています。いずれでも、親の死亡届は市役所に提出されていました。ところが、年金機構はこれを確認できず、年金の支払いを続けてしまった。組織が別々だと、それぞれの組織が持っている情報が相互にリンクできません。いわゆる、タテ割り行政の弊害です。

その一方で、本来なら給付金や補助を受給できる人が、何かの理由で申請できず、必要な支援を受けていないケースもあります。本当に必要な人に、必要な支援が届かない不公平が放置されて、よいわけはありません。

ですから、マイナンバー制度を多くの分野で利用して、こうした不公平を改善することが期待されています。しかし、それには法律をつくる時間が必要なことと、プライバシー保護のために、当面は社会保障、納税制度、災害対策の分野でのみに限定して利用されることになっています。

こうしてみると、行政上のメリットだけが際立っているように思えますが、政府は、利用者も、行政手続きの際の身元確認などで、複数の書類を提出する煩わしさから解放され、利便性が向上する、といっています。

Q 自分の好きなラッキーナンバーって、選べるの?

A いいえ、選べません。役所があなたに12ケタの番号を割り振り、知らせてきます。

市区町村役所は、「マイナンバーの通知」を、今年10月1日から順次、住民票に記載された世帯ごとに、簡易書留で送ります。

もし、何かの事情で、いま住んでいる場所と住民票の住所が異なっていると、受け取れなくなるおそれがありますので、注意してください。
なお、簡易書留には、次の3つの書類が同封されています。

  1. マイナンバーの通知カード
  2. 個人番号カードの申請書と、返信用封筒
  3. マイナンバーについての説明書類

あなたと家族のマイナンバーを証明する大切な書類ですから、確実に受け取ってください。受け取ったら、自分たちのものに相違ないかどうか確認し、大切に保管してください。

ちなみに、通知カードは、住民票に記載された生活者に一人1枚、必ず交付される、マイナンバーを証明する特殊紙製のカード。個人番号カードは、申請した人にだけ交付される、プラスチック製のICカードです。

Q 個人番号カードの方は、申請しないともらえないわけかな?

A はい。欲しい人は、申請してください。

個人番号カードは、希望して申請する人にだけ発行される、マイナンバーの証明書と身分証明書を兼ねたICカードです。表面には氏名、住所、生年月日、性別、顔写真。裏面にマイナンバー等が記載され、ICチップを搭載しています。

申請するときは、簡易書留に同封された申請書に署名または記名押印をし、顔写真を添付したうえで返信用の封筒に入れ、郵便ポストに投函してください。郵便が面倒だという人は、スマートフォンで顔写真を撮影し、オンラインで申請をすることもできます。

大変便利なカードですし、交付手数料は無料ですから、ぜひ取得されることをおすすめします。
受け取るのは、来年1月以降です。

Q 個人番号カードも、送ってもらえるの?

A いいえ。役所に受け取りに行きます。

申請後しばらくして「交付通知書」(はがき)が届きますから、その「交付通知書」と、前に届いている「通知カード」、運転免許証などの「本人確認書類」を持って行きます。そのとき、もし「住基カード」を持っていたら、受け取るときに返却してください。

交付された個人番号カードは、マイナンバーの証明書兼身分証明書として、今後は個人番号を確認するさまざまな場面(就職、転職、出産育児、病気、年金受給、災害等)、行政機関による付加サービス、電子証明書による民間部門を含めた電子申請・取引などで、広く利用が進んでいくことでしょう。

Q 外国でも、マイナンバーはやってますか?

A はい、あります。

表1を見てください。たとえば、アメリカには、社会保障番号制度があります。国民と労働許可を持つ在留外国人に向けて、紙製の社会保障番号証を交付し、年金、医療、その他の社会扶助、行政サービス全般での本人確認などに使われています。

番号制度の先進諸国では、国によって名称が違うように、利用の範囲や、番号の構成、発行するカード、民間利用への制限などがさまざまです。それでも、番号制度の運用の歴史は、日本より先を行っています。

これまでの日本は、行政が分野を横断するかたちで個人識別番号を持つことに、かなり慎重な部類に入っていた国でした。

Q マイナンバーが流出したら困るのでは?

A たしかに!

他人のシステムに侵入して情報を盗み取るような最近のサイバー犯罪には、びっくりすることばかりです。でも、安心してください。
マイナンバー法では、そうした危険を考えて、法律に定めてあるものを除き、行政側が特定個人情報の収集・保管を行うことを禁じています。また、特定個人情報ファイルを作成することも禁じています。

さらに、個人情報を収集する際には本人確認を義務づけ、第三者機関の特定個人情報保護委員会が、マイナンバーが適切に管理されていることを監視・監督する仕組みにしています。

その上、個人番号利用事務等に従事する者が、正当な理由もなく特定個人情報ファイルを提供した場合、罰則を「4年以下の懲役もしくは2百万円以下の罰金」と、従来の行政機関個人情報保護法等の二倍に強化しています。

情報システム面では、年金の情報は年金事務所、国税の情報は税務署というふうに、個人情報を分散管理しています。特定の機関が、一括所有することはありません。

さらに、異なる行政機関との情報連携に当たっては、個人番号を直接使わず符号を用いることとし、アクセスできる人を制限・管理するほか、行政機関と行政機関との間の通信はすべて暗号化するなど、安全対策に万全を期しています。

Q 不動産事業をする法人には、個人と別の番号がつくとか...?

A はい、法人番号といいます。

法令の規定に基づいて設立登記した、株式会社や有限会社といった法人には、国税庁長官が指定した13ケタ(12ケタの法人番号+1ケタの検査数字)の法人番号が、一法人に対して一番号のみ、今年の10月から、書面で通知されてきます。個人事業者に対しては、指定されません。

個人番号が利用範囲に厳しい制限が設けてあるのに対し、法人番号はだれでも自由に利用できるよう、インターネット上にも公表されます。

Q 不動産の事業でも、マイナンバーを使うの?

A はい。事業者の方はどなたでも、規定の書類に、法人番号だけでなく、外注先の人や雇用者の個人番号を記載することが求められます。

事業者は、総務や経理の仕事として、従業員の厚生年金保険の被保険者資格取得届、健康保険被保険者資格取得届、健康保険被扶養者(異動)届、報酬月額算定基礎届、雇用保険被保険者資格取得届、給与所得の源泉徴収票や給与支払報告書、あるいは外部の税理士さんや社会保険労務士さんへの報酬支払調書など、社会保険や税分野の書類を作成し、役所に提出しています。

来年一月からは、これらの手続き書類に、該当者の個人番号(または法人番号)を書き込むことになります。

Q マイナンバーを事業で使うと、保管などにずいぶん気を使うことになりそう?

A そのとおりです。

業務の中で、マイナンバーの

  1. 提供を受けるとき
  2. 保管するとき
  3. 利用するとき
  4. 不要になったとき

の4つの段階のそれぞれで、注意すべき点があります。

■表2 番号と身元を確認する書類

  主な書類(各、いずれか一つ)
番号確認 〈個人番号、氏名、住所が記載された書類〉
個人番号カード、通知カード、住民票の写し(番号記載のもの)
身元確認 〈写真つきの書類〉
個人番号カード、運転免許証、運転経歴証明書、旅券、身体障害者手帳、在留カード、特別永住者証明書

上記等の書類の提示が困難である場合に認められる書類については、内閣官房のマイナンバー制度ホームページをご覧ください。

  1. マイナンバーを受け取るときは、利用目的を明示した上で、個人番号を確認すると共に、なりすましを防止するために身元確認が必要です。
    番号確認と身元確認をするために使う書類は、表2のものと決まっています。会えない人は、確認書類をコピーして送ってもらうことになるでしょう。確認が終わったら、記録を残し、関係書類は適切に廃棄します。
  2. 個人番号の保管は、プライバシー保護のために、厳重に行わなければなりません。パソコンで扱う場合は、アクセス権を設定するなどして、無関係の従業員から見えないように、また持ち出せないようにする義務があります。書類は、鍵をかけて保管します。
  3. マイナンバーの利用は、社会保障と税分野のあらかじめ決められた範囲・目的に限られます。それ以外に流用すると、処罰の対象になります。取り扱う担当者を、決めておきましょう。
  4. 従業員が退職したり契約解除になったりして、保管していたマイナンバーが不要になったときは、廃棄します。その場合、パソコンでの保管なら削除、帳簿類なら黒塗りで番号を確実に消してください。
    マイナンバーの記載が必要な書類は、それぞれ法定保存期間が定められていますから、それを過ぎた書類は、シュレッダーで裁断したり焼却したりして、廃棄してください。

Q 将来は名寄せが簡単にできそう?

A その流れではありますね。

しかし、年金機構の個人情報流出事件などをうけて、最近はマイナンバー制度にもプライバシーの侵害を心配する声が少なからずあります。こういう時期に、いま以上に利用範囲を拡大するのは、難しい状況といえましょう。

それでも、政府は、預金口座にマイナンバーを記すことや、予防接種、メタボ健診の記録を転居先の自治体や転職先の健保組合に引き継ぐことなどを盛り込んだ「マイナンバー法改正案」を国会に上程しています。

今年中に成立するかどうか微妙なところですが、行政事務の効率化と財政の健全化(税収入を増やし、支出を減らす)が、いまの日本の緊急な課題である以上、これに寄与するところの大きいマイナンバー制度の利用範囲が拡大していくことは、間違いないことと思います。

まずは、来年1月から実際にマイナンバー制度を体験してみて、問題点があれば修正し、新制度を育てていく。そうした建設的な社会改革の試みが、いまの日本に最も求められている部分ではないでしょうか。

レオパリスくんのリスンリスン(1)より転載

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