最新の民泊事情!マーケットの動向と行政、運営者の新しい動き

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民泊をめぐる行政の動き

新しいビジネスであるため行政も試行錯誤している段階というのが実情であり、民泊に対する姿勢は各自治体で大きく異なります。民泊新法施行にともない、取り締まりや規制を強化する自治体もあれば、地域活性化を目的として民泊を活用する自治体もあります。

日本有数の観光地である京都では、国内外から多くの人々が訪れるがゆえに民泊に関連するトラブルが多発。そのため京都市は民泊に対して厳しい姿勢をとってきています。

2018年9月前述の民泊新法施行を受けて、京都市は無届の民泊事業者に対して営業停止の緊急命令を出しました。これは全国で初めてのことです。

また京都市の発表によると、2016年4月から2018年8月末までに無届の疑いがある民泊2,259軒に対して調査指導を行い、8割の事業者が営業を中止もしくは撤退したそうです。今後も、観光客と市民の安全な生活を最優先とし、違法な民泊への取り締まりを強化するとしています。

大阪市内でも違法民泊の急増が問題視されていたため、民泊新法成立を前に民泊に関する独自の条例を可決しました。

この条例には「住居専用地域の営業を全面的に禁止」「小学校の敷地の周囲100m以内の範囲で営業時間の規制」「管理業者は外国人宿泊者に対してパスポートの写しを提出させて、宿泊者名簿とともに一定期間保存する義務」などが盛り込まれています。

厳しい取り締まりがある一方、地域活性化を目的に自治体が積極的に民泊を誘致している事例もあります。

徳島市は2017年に「イベント民泊」を開催。観光客が増える阿波おどりの期間中に自宅を提供する市民を募りました

市民が観光客を自宅に泊めることで、阿波踊り期間中のホテルや旅館不足を解消する、市民と観光客の交流を推進するという効果が期待できるそうです。会期中は38部屋の民泊が可動し、273人の観光客が利用しました。

千葉市では「特区民泊」をPRするホームページを開設しました。千葉市内では若葉区と緑区の一部で特区民泊が許可されており、ホームページでは民泊施設増加を目的として、特区民泊の事例や説明会の様子などを紹介しています。

特区民泊とは、国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例が適用される民泊のことです。民泊は本来、宿泊期間が1ヶ月未満の場合には旅館業法が適用されて、フロントの設置や宿泊者名簿の作成、保健所による検査などが義務付けられます。

しかし、国家戦略特区内であれば、一定の基準を満たした上で都道府県知事の認可を得ることで旅館業法の適用が除外され、旅館業法に基づいて民泊を開業するよりも参入障壁が低いというメリットがあります。

民泊をめぐる運営者の動き

民泊需要の高まりからさまざまな企業が民泊ビジネスに参入し、サービスも多様化しています。

インターネットサービス大手のグループ会社は、9月に「コンドミニアム型民泊施設」の運用代行を実施することを発表しました。長期滞在する観光客を対象に、リビングとキッチンがあるコンドミニアム型の部屋を提供。浴室やトイレも完備されていて、インターネットも快適に使えるようになっています。大手ハウスメーカーが設計を担当し、デザインにもこだわったワンランク上の民泊を提供します。

東京の大手鉄道会社は一棟マンションをまるごと利用した「民泊マンション」を提供しています。今後、民泊マンションを中心に民泊の展開を進め、沿線地域の空き家対策、地域活性化を図っていくそうです。

大手家電メーカーは東京と大阪に10棟程度の民泊をオープンさせる予定です。民泊での収益に加えて、民泊を「ショールーム」ととらえて自社の製品をPR。家電の売上アップにもつなげていくそうです。

周辺サービスに関してもさまざまな企業が参入しています。

大手警備会社では民泊に特化した警備サービスの提供を開始しました。専用のコールセンターを設置して24時間体制で対応。日本語のほかに英語や中国語などにも対応し、苦情や緊急時には迅速に警備員が駆けつけます。

訪日外国人向けのMVNO通信サービスを提供している会社は、民泊利用者に特化したモバイルWifiルーターの提供を開始しました。通信制限なし、高速通信、多言語サポートなどが売りです。民泊運営者をサポートする体制も整っています。

ほかにも荷物預かりサービスや民泊事業者向けの損害保険など、民泊に関連したさまざまなサービスが誕生しています。

まとめ

民泊は、訪日外国人の増加による需要の高まりで成長が期待されるビジネスです。市場は個人、ベンチャー企業から大手企業まで、業種問わず入り乱れています。

大きなビジネスチャンスが到来している一方で、法整備はまだ追いついていません。市場全体、行政の対応、サービスがどのように変化していくのか注目です。