経営しているアパートを建て替えるべきだと判断するポイント

  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア

アパートの築年数が経ってくると修繕・修復や空室・賃料低下が気になってきます。いつかは大規模なリフォームや建て替えが必要とはわかっていながらも、費用もかかるため踏み出せない人も多いと思われます。

そこで今回は、経営しているアパートの建て替えが必要と判断するためのポイントを紹介したいと思います。

判断のポイント①:空室や家賃収入

築年数と家賃はどの程度関係しているか。

三井住友トラスト基礎研究所が東京23区の賃貸マンションを対象とした調査によると、新築時から築25年までの家賃下落率は、1年で平均1%程度であることが示されています。

引用元:経年劣化が住宅賃料に与える影響とその理由|レポート・コラム【株式会社三井住友トラスト基礎研究所】
出所)アットホーム株式会社のデータを用いて三井住友トラスト基礎研究所算出
※2001年〜2011年の理論賃料指数を築年数ごとに平均化した数値。

また、築年の浅い期間の家賃下落率が大きく、経年に従って家賃下落率は緩慢になっていることもわかります。

もちろん、耐用年数の短い木造のアパートなどではより家賃下落率が大きい可能性や都心部と地方などの地域差も考えられます。しかし、20年後には賃料が20%程度下がっているなど大まかなシミュレーションをする際の目安にはなるでしょう。

これらの空室率や賃料低下による収入の減少幅により、賃貸管理費用や固定資産税、ローンの元利金返済などが慢性的に賄えなくなるとしたら、建て替えが必要となっている1つのサインといえます。

貸家の空室率は平均どのくらいか

総務省統計局が5年ごとに実施している「住宅・土地統計調査」で、直近にあたる平成25年度の数値を見てみると、稼働している賃貸住宅が18,518,900戸、空室となっている賃貸物件が4,291,800戸となっています。それらの数値から空室率を計算すると18.8%程度となります。

空室が出ないように対策は講じるべきですが、自身が保有するアパートでも、上記の水準まで空室率が高まる可能性は想定しておいてよいのかもしれません

空き室が出た場合、具体的にどの程度の損失になるのか計算してみましょう。

8部屋のアパート1棟を所有し、1部屋4万円の賃料で満室経営している場合、年間賃料は384万円となります。1部屋空室になると、空室率にして12.5%、年間賃料の減少は48万円、2部屋空室になると、空室率にして25%、年間賃料の減少は96万円となります。

判断のポイント②:耐震性

新旧耐震基準の違いとは?

日本で本格的な耐震基準が導入されたのは建築基準法施行令に規定が盛り込まれた1950年のこと。その後、大規模な地震が起こるたびに耐震基準は見直されてきましたが、もっとも重要な見直しとなったのが1981年の建築基準法施行令改正によるものです。

1978年の宮城県沖地震を契機に行われた1981年の見直しにより、震度6強の地震でも倒壊しない強い耐震性が要求されるようになりました。これにより1981年6月以降の基準を「新耐震基準」、それより前の基準を「旧耐震基準」と区別するようになっています。

「旧耐震基準」で建てられた賃貸物件はまだ多く残っており、その大半が老朽化の時期を迎えているということができます。

老朽化した場合の危険性について

アパートが老朽化した場合、様々な危険性が生じます。たとえば、最悪の場合、躯体部分が朽ちて、建物自体が倒壊してしまうことも考えられます。特に、地震の際にはその危険性が高まります。

もし倒壊により入居者や第三者に損害を与えた場合には、賃貸物件のオーナーが債務不履行責任や所有者責任にもとづく損害賠償義務を負うことになります。

また、メンテナンスの行き届いていない築古物件では匂いやカビなどの衛生面の問題を生じたり、木造物件ではシロアリの被害が起こったりすることもあります。素材使用や設備の仕様で十分な耐火性のない物件では火災のリスクも高くなります。

傷み具合のチェックポイント

屋根は、亀裂から雨漏りの原因となったり、劣化や破損から強風時の落下物の原因となったりします。定期的に亀裂などがないか、雨どいも含め、破損がないかチェックすることが有用です。外部階段では腐食のチェックが重要です。

建物の基礎ではひび割れがないかを確認します。通風孔の周りにひび割れが起きている場合があるほか、基礎の欠陥や地盤液状化により建物の不等沈下が生じていることも......。また、建物内部からは、天井、壁の水じみの有無、床については軋みや沈みの有無を確認する必要があります。

建物を原因とした事故などがあれば所有者責任が問われることもあります。老朽化や傷みが進行していると場合は建て替えも視野に入れて対応を考えなければなりません。

補助金や優遇税制を使ってお得に建て替え

自治体によっては、設計費、解体費などの補助が利用できる場合があります。そのため、各自治体のホームページや相談窓口で情報収集することをおすすめします。

また、耐震化のための建て替えには、建て替え後に課税される年度から3年にわたり、固定資産税などが全額減免される軽減措置も設けられています。

自分の判断基準を持ち、サポート制度を活用すれば、手間や資金の面を考えて二の足を踏んでいたアパート建て替えに踏み切ることができるかもしれません。アパートの建て替えでは、解体撤去費用と新築工事費用の両方が必要となりますが、アパートローンをうまく活用して、解体費用や整地費用も含めた資金調達を検討するのがよいでしょう。

木造、鉄骨、鉄筋コンクリートでの耐用年数の違い

賃貸住宅の法定耐用年数は、軽量鉄骨造19年、木造22年、鉄骨造34年、鉄筋コンクリート造47年となっています。これらは所得税などで減価償却費を計算するために必要となるものであり、必ずしも現実の耐用年数を意味するものではありません

実際には法定耐用年数より長く使用されているケースもあり、同じアパートでも鉄骨と木造では耐久性が異なります。アパートをどの程度使用できるのかについての判断材料になりますので、将来の建て替え時期を検討する際の指標にするとよいでしょう。

まとめ

アパートの建て替えともなれば、大掛かりな作業工数と費用が必要になります。空室や老朽化などの他にも、実利を含めた総合的な判断をすることが大切でしょう。

特集:「アパート建て替え」の成功のカギ

第1回経営しているアパートを建て替えるべきだと判断するポイント
第2回アパートの建て替えを実施するために必要な手続きと流れ
第3回アパートの建て替えで立ち退き問題とは?オーナー目線で考える具体的な解決策
第4回リフォーム?それとも売却?アパート建て替え以外の選択肢とは

  • お役立ち情報満載!はじめてのアパート賃貸経営