住宅から見る2015年度税制改正大綱のポイント

  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア

消費税率が8%に引き上げられた直後、住宅市場では販売不振となりました。今回の改正では、その時の教訓を生かし、2017年4月に10%へ引き上げられる時に住宅市場が冷え込まないようにするための措置が設けられることになりました。具体的には、直系尊属(例:父母や祖父母)から住宅取得資金の贈与を受ける場合には、下記表の金額まで非課税となります。

<住宅取得に係る贈与税の非課税措置>

住宅用家屋の取得等に係る契約締結期間 住宅の種別 消費税率10%が適用された場合 消費税率が8%で変わらない場合
2015年 耐震・エコ・バリアフリー住宅 1,500万円
一般住宅 1,000万円
2016年1月~9月 耐震・エコ・バリアフリー住宅 1,200万円
一般住宅 700万円
2016年10月~2017年9月 耐震・エコ・バリアフリー住宅 3,000万円 1,200万円
一般住宅 1,000万円 500万円
2018年10月~2019年6月 耐震・エコ・バリアフリー住宅 1,200万円 800万円
一般住宅 700万円 300万円

今回の改正のポイントは、消費税が10%に引き上げられる予定となっている2017年4月の照準があわせられている点です。2016年10月~2017年9月末の間に住宅取得の契約を行い、そのための贈与を受けた場合に、贈与税の非課税限度額が最大(3,000万円もしくは2,500万円)となるように設計されています。

消費税が上がることを前提に、その反動減の影響が残ることを前提に、その後も非課税制度は続き、段階的に縮小していく予定となっています。
以上からいえることは、住宅をいつ購入するかによって贈与税の非課税枠が変動するため、この仕組みを活用される場合には、消費税と贈与税の非課税枠両方の観点から、いつ購入するかを検討する必要があるといえます。

住宅取得等資金の贈与に係る相続時精算課税制度の特例などは延長へ

既にある制度の期限が延長されることも決定しています。特に知っておいていただきたい点は2つあります。それは、「住宅取得等資金の贈与に係る相続時精算課税制度の特例」と「住宅ローン減税」の延長です。
まず、住宅取得等資金の贈与に係る相続時精算課税制度の特例とは、住宅購入時に贈与を受け、それを相続税精算課税制度の仕組み(贈与時累計2,500万円まで非課税)を活用する特例です。

通常の相続時精算課税制度においては、贈与者の年齢が60歳以上という要件を満たす必要がありますが、住宅取得に限って言えば、贈与者の年齢制限はありません。そのため、贈与者の年齢関係なく、子供に住宅取得資金を渡しておくといったことでも活用可能です。ただし、贈与者が死亡した際には、相続税の課税対象となりますのでご注意ください。この仕組みが2019年6月30日まで利用できるように延長される予定です。
もう一つ、住宅ローン減税も延長されています。これは、住宅ローンを組んで住宅を購入する場合に、一定の要件を満たせば、所得税(場合によっては住民税も)を減らすことができる仕組みです。現在適用されている仕組み(一般の住宅の場合、最大10年間で400万円税金の控除につながる)が、2019年6月30日まで適用される予定となっています。

空き家の固定資産税が6倍に!?

最後に、空き家対策についても触れておきましょう。2013年の段階において、全国の空き家は820万戸、空き家率は13.5%となっており、今後も空き家が増加する恐れが出てきています。空き家が増加すれば、倒壊や放火などが発生する可能性も否定できず、防災や防犯上望ましくありません。
それではなぜ空き家のまま放置されているのかと言えば、固定資産税の問題があるからです。実は家屋がある土地の場合、固定資産税が1/6となるような特例があるのですが、家屋を取り壊して更地にするとこの特例が使えなくなります。つまり、それまでかかっていた固定資産税の6倍となるおそれがあるのです。そのため、更地にせず空き家のまま放置されているといえます。

今回の税制改正大綱において、空き家等対策の推進に関する特別措置法に基づき、危険な空き家であるとして自治体から勧告の対象となった土地に関しては、固定資産税が1/6となる特例を利用できなくなることになる予定です。
それでは空き家をお持ちの方はどうすればよいのでしょうか?その一つの方法が、空き家を取り壊してアパートを建てる方法です。
場所にもよるとは思いますが、特に駅から近いケースや近くにスーパーやコンビニ、商店街や学校などがあるケースであれば、借り手のニーズも高いといえます。稼働率が高ければ、家賃をもとに建設コストや固定資産税を支払うだけでなく、プラスの収入としても得ることは可能といえます。
空き家の活用法に関しては、「空き家の固定資産税があがるかも...早めに対処を!!」をご覧ください。

以上、住宅から見る2015年度税制改正大綱のポイントを解説してきました。住宅関連の税制改正も毎年変化があります。利用できるものはうまく利用し、ライフプラン設計をより豊かなものとしていきましょう。