失敗しない土地選びには「地目」が重要!注意すべき地目とよくある失敗例

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土地の購入を検討するにあたって、「地目」に注目したことはあるでしょうか。

「地目」のせいで想定外の出費や手続きが出てしまったという失敗談を耳にします。よく分からないまま購入してしまうと、後から思わぬトラブルが発生するかもしれません。

今回は失敗しないための土地選びとして、「地目」の基本、調べ方、よくある失敗についてご紹介します。

地目とは

地目とは、不動産登記法にもとづいて定められている土地の区分です。土地の登記の際に記録される項目の1つで、以下の23種類に区分されます。

田、畑、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園、雑種地

地目とは「何に使うための土地か」「どんな土地か」をひとことで表したもの。「土地の目的」を略して「地目」と考えるとわかりやすいです。

その中でも特に多いのが以下の5つの地目になります。

宅地 家や店舗、会社のビルなどを建てることができる「建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地」
お米を育てる田んぼなど「農耕地で用水を利用して耕作する土地」
お米以外の農産物を栽培している畑など「農耕地で用水を利用しないで耕作する土地」
山林 山や雑木林など「耕作の方法によらないで竹木の生育する土地」
雑種地 家も建っていない、田んぼでも畑でもない、特に使われている形跡がない「いずれにも該当しない土地」

地目を確認するべき理由とは?

地目によっては、購入前に特別な手続きを行ったり、事前の調査や改善策を講じる必要があります。地目は土地選びの重要なヒントになります。地目別に、よくあるトラブルや知っておくべき特徴、必要な手続きについてご紹介しましょう。

農地転用手続きが必要なケース

田や畑といった農地は、宅地として利用する際に「農地転用」の手続きが必要です。農地の荒廃・乱開発を防止して優良な農地を確保することを目的としており、住宅地など他の用途に好き勝手に転用できないようになっているのです。

4ヘクタール以上の場合、都道府県知事に届け出をして農林水産大臣に許可を受ける。4ヘクタール以内の場合、農業委員会を経て都道府県知事の許可を受ける。

土地を購入した後に知って、地目によっては家が建てられない地目変更手続きに労力とお金がかかってしまったというにならないようにしましょう。

東京都在宅のAさんは、自宅建築のための土地を探していました。予算に合う土地がなかなか見つからなくて困っていたところ、杉並区にある「農地」を紹介されました。

土地の所有者がご高齢で、管理が難しくなったために手放したいとのこと。東京の土地を安く手に入れられるということで、Aさんは前向きに検討していました。

しかし「農地」を購入できるのは「農業従事者のみ」であり、Aさんは購入できませんので、宅地への転用が済んでからの購入になります。加えてその土地は「農業振興地域」であり、転用手続きの前に「農用地区域からの除外」が必要であることもわかりました。

これらの手続きがすべて完了し、実際に購入可能になるのが約1年後になります。価格的には魅力的ですが、予定していたスケジュールでの購入が難しいとわかり、断念せざるを得ませんでした。

Aさんの例のように、農地を転用して宅地として使用するにはクリアしなければならない多くの条件があります。今後、比較的容易に、そして安価に購入できるとタイミングがあるとすれば、2022年以降の「生産緑地」です。

2022年には多くの生産緑地が指定解除され、多くの土地が放出されると予想されています。すぐに土地が必要でないのであれば、2022年まで待ってみるのも、良い選択だと言えるでしょう。

住宅ローンなど融資の障害となるケース

住宅ローンの融資を受ける際、地目が「雑種地」や「山林」などになっていると、金融機関から地目変更を求められるケースがあります。

不動産登記法37条で「地目又は地積について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その変更があった日から一月以内に、当該地目、又は地積に関する変更の登記を申請しなければならない。」と定められているためです。

地盤にリスクが伴うケース

地目が「沼」「ため池」「田」などの土地は、地盤が弱い可能性があります。地盤に水分が多く含まれていると、地盤沈下や液状化現象が発生する危険性が高まります。

こうした地目の土地を購入した際には、地盤調査を行いましょう。場合によっては地盤改良工事をする必要もあるかもしれません。通常の宅地と比較すると、調査費用や地盤改良費などの費用が必要です。

地盤の調査方法にはいくつか種類があり、一般的にリーズナブルと言われている「スウェーデン式サウンディング試験」で10万円前後、地質まで調査できる「ボーリング」で20〜30万円程度が相場となります。

地盤改良工事には一般的に3種類あり、一番安い工法の「表層改良」では90万円程度で、一番高い工法の「鋼管杭工法」では210万円程度にもなります。工事期間はどの工法でも1週間はかかりません

住所を入力するだけで簡単に地盤の強さを調べられる「地盤マップサービス」もありますので、土地選びの際に活用すると良いでしょう。

参考:地盤サポートマップ

公衆用道路で建物が建てられないケース

地目が公衆用道路でも建物が建てられないケースがあります。

公衆用道路とは「一般交通の用に供する道路」という地目であり、私道や、農道・林道といった道も公衆用道路と定められているものもあります。

建物を建てる際に問題となるのは、あくまで「建築基準法上で定められた道路」かどうかという点で、登記された「公衆用道路」とは別の判断基準が必要になります。

その土地が、建築基準法上で定められた道路かどうかの判断は非常に難しいため、土地や建物に関する調査・測量を依頼できる「土地家屋調査士」という専門家に相談してみると良いでしょう。。

墓地によるリスクが伴うケース

地目が「墓地」の土地は、墓地が移転して跡地が残っており、かつてそこにお墓があったと考えられます。

墓地を移転する際には遺骨も掘り出して移動するので、その土地に人が埋葬されているわけではありません。しかし、心理的に「お墓の跡地に住むのには抵抗がある」という方は多いかと思います。

特に賃貸物件を建てて経営するという場合では注意が必要です。「お墓があった場所」という噂が広がって、入居者が集まらない可能性もあります。

地目の調べ方

購入前の土地

登記情報を管理している法務局・地方法務局やその支局で、その土地の登記事項要約書もしくは登記事項証明書を発行してもらえば地目を知ることができます。

土地の番地だけがわかっている場合

所有権がなくても取得することが可能です。登記事項要約書や登記事項証明書の発行には500円~1000円ほど手数料がかかります。

すでに所有している土地の場合

固定資産税納税通知書に地目が記載されています。土地の所有者であれば、市区町村役場に電話で問い合わせれば地目を教えてくれることもあります。ただし、役場によって対応が異なり、教えてくれない場合もあるので注意が必要です。

一番確実な方法は「登記済証」や「権利証」を見ることです。それが手元になければ費用が少しかかりますが法務局・地方法務局やその支局で、「登記事項要約書」もしくは「登記事項証明書」を確認するのがよいでしょう。

「登記地目」と「現況地目」の違い

登記地目
土地の登記書類や権利書に記されているもの。土地の利用状況が変化しても、申請人が申請しない限り地目は変更されません。

現況地目
実際に利用されている地目のこと。市区町村の担当者が、ある一定の周期に、実際に現地を見て判断します。

固定資産税納税通知書の記載や市区町村役場が把握しているのは「現況地目」になります。現況地目は、市区町村役場が独自に調べているので、必ずしも登記地目と一致するわけではありません。固定資産税納税通知書には「宅地」と書かれていても、登記上は「山林」や「雑種地」のままになっていることもあります。

「山林」や「雑種地」などに家を建て「宅地」となった場合は、地目に変更があった日から1ヶ月以内に変更登記をすることが義務付けられています。もし変更登記がされなかった場合は、10万円以下の過料が課せられます

まとめ

土地購入の際は、自分の用途に合う土地か、地目をよく調べて検討しましょう。行き詰まったら専門家の活用も視野に入れ、失敗のない土地選びをしましょう。