「長期優良」「低炭素認定」優遇策が集中する省エネ型住宅とは?

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長期優良住宅とは?

この制度は2006年6月に施行された住生活基本法を背景に、2009年の6月に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づいた制度です。目的は「長期に渡って良好な住宅の状態を保てるように講じられた優良住宅を建設すること」とされています。そもそも日本の住宅は、建築から平均30年ほどで取り壊されているといわれます。こうした「スクラップアンドビルド」の現状を改め、長持ちする家の建築を推進させるために設けられた優遇制度です。

構造躯体の劣化対策や耐震性、維持管理や更新の容易性、省エネルギー性にそれぞれ一定の性能基準を定め、それをクリアした住宅を新築する場合は、税負担の軽減などの優遇策を適用しようというものです。

長期優良住宅のメリットとデメリットを整理すると以下のようになります。

長期優良住宅のメリット 長期優良住宅のデメリット
  • 所得税の住宅ローン控除額が多くなる
  • 所得税の投資型減税を受けられる(住宅ローン利用がない場合)
  • 登録免許税の軽減が受けられる
  • 不動産取得税の控除額が多くなる
  • 固定資産税の軽減が増える
  • フラット35Sの利用、金利優遇が受けられる
  • 申請にコストがかかる
  • ハウスメーカーや工務店などの打合せに手間がかかる
  • 建築費のコストアップ
  • 完成後のランニングコストがかかる(実際は不透明)
  • 建物着工後の検査は行っていない
  • 長期優良住宅だからといっても施工品質がよいとは言えない

表のように、この制度を利用すれば税制面での優遇が多くありますが、施工品質の面では建物着工後の検査制度はないので長期優良住宅であれば必ず安全で品質の良い住宅になるとは言い切れません。性能の認定はあくまでも書類上のものです。また、制度利用により建築コストもアップするので、費用対効果はよく計算しておくべきです。

低炭素認定住宅とは?

低炭素認定住宅とは、住宅から排出される二酸化炭素の量を減らして省エネルギー化することを目標としており、いわゆる地球温暖化を抑制する目的があります。この住宅の認定基準は「都市の低炭素化の促進に関する法律」に基づき、認定されるためにはいくつかの項目があります。

認定の基準を簡単にあげると次のようになります。

  • 省エネ基準と同等以上の断熱性能、日射熱取得性能の確保。
  • 省エネ基準に比べ、住宅の一次エネルギー消費量がマイナス10%以上であること。
  • 市街化区域であること
  • 資金計画が低炭素化のための建築物の新築等を確実に遂行するため適切であること。その他、選択式で以下の項目にある低炭素化の措置を講じていることが必要です。
  • 便器や水栓、食洗機などの節水機器の設置
  • 雨水・井水・雑排水の利用のための設備を設置
  • HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)の設置
  • 再生可能エネルギーを利用した発電設備及び定置型蓄電池を設置
  • 緑地が敷地面積の10%以上などのヒートアイランド対策
  • 住宅劣化の軽減に資する措置
  • 木造住宅もしくは木造建築物である
  • 高炉セメントなどを構造耐力上主要な部分に使用している

低炭素認定住宅のメリットとデメリットをまとめると以下のようになります。

低炭素認定住宅のメリット 低炭素認定住宅のデメリット
  • 所得税の住宅ローン控除額が多くなる
  • 所得税の投資型減税を受けられる(住宅ローン利用がない場合)
  • 登録免許税の軽減が受けられる
  • フラット35Sの利用、金利優遇が受けられる
  • 補助金を受けられる場合がある
  • 省エネ対策だけでよいので、長期優良住宅より取り組みやすい
  • 申請にコストがかかる
  • ハウスメーカーや工務店などの打合せに手間がかかる
  • 建築費のコスト増

表のように、長期優良住宅と同様なメリット、デメリットがありますが、双方の制度は似たような内容でその区別にはわかり難いかもしれません。

長期優良住宅や低炭素認定住宅はどんな人にお勧め?

双方とも省エネをしたいという方には向いています。ただ、長期優良住宅の目的は「長期にわたって快適に暮らせる家づくり」であり、省エネにとどまらず、住宅を長持ちさせ、長期的に優良なストックとして受け継いでいくという、より幅の広い目的をもっています。逆に、低炭素認定住宅の目的は「住宅から排出される二酸化炭素の量を減らして省エネルギー化すること」というように、CO2排出量の削減だけを目指すものです。

今後、家を建てたいと考えている方は、どんな特徴を備えた家にしたいのかを明確にしておくことが重要でしょう。それによって、どちらの制度を利用したらよいのかの判断をしていくことになります。なお、これらの制度の認定申請は工事着工前に行う必要があり、工事着工後には申請できません。建てる前に方向性を決めて工務店などと事前に準備をしておく必要があります。

参考資料

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