「建築物省エネ法」施行。省エネ義務化へ

  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア

2016年は「誘導措置」

建築物省エネ法が2015年7月に制定され、2016年4月、一部施行となりました。2017年4月には完全施行となります。今年施行されたのは強制力のない「誘導措置」ですが、来年は「規制措置」がスタート。大規模建築物については、一定の省エネ性を備えないと建築が認められません。これまで建築物については、「建築基準法」によって構造の強さや防火性能、室内の空気環境などの規制がありました。省エネ性能については強制力をもつ規制は行われてこなかったのですが、なかなか進まない住宅やオフィスビル、ホテル、商業施設などの省エネ化を前進させるため、国は2020年を目途にすべての建築物に一定レベルの省エネ性能の確保を義務づけ、それが達成できない場合には建築を認めないという厳しい対策をとることとしています。

進まない民生部門のCO2削減

実際、工場などの産業部門や自動車・鉄道などの運輸部門では、CO2削減は着実に進んでいます。ところが「業務その他部門」(事務所や商業サービス関係)や「家庭部門」の、いわゆる民生部門では、CO2排出量全体の3分の1以上を占める大きなものでありながら、削減がなかなか進んでいまません。地球温暖化防止のため、世界の各国・各地域でそれぞれ目標を掲げ、CO2削減への取り組みが進められているなか、日本では、この民生部門における削減が大きな課題となっており、その一環として建築物への規制が強化されることになっています。

「誘導措置」はいずれも新設

表のように、新法は「誘導措置」と「規制措置」から成っています。

「誘導措置」は「エネルギー消費性能の基準適合認定・表示制度」と「性能向上計画認定・容積率特例」の二本立てで、対象となるのはすべての建築物です。「誘導措置」ですから採用するかどうかは任意ですが、いずれも従来の「省エネ法」にはなかったものです。前者の「表示制度」は、建築物の所有者が省エネ基準に適合することについて所管する行政庁の認定を受けると、その旨の表示(BELS=ベルスと呼ばれるもので、☆の数で示す)ができ、消費者が一目で建物の省エネ性能の水準を知り、横並びで比較することができます。

後者の「容積率特例」は、建築物の新設・増改築・設備の改修などに当たって、その計画が省エネ性能の向上に役立つと行政庁に認定されると、省エネ性能向上のための設備について、通常の建築物の床面積を超える部分を容積率に不算入とすることができるというものです(上限10%)。

省エネ性能が高い建物は、事実上容積率が割り増しになり、床面積を有効に使うことができます。

大規模・中規模建築物への規制を厳格化

2017年4月1日施行予定の「規制措置」は、大きく二つに分かれています。

一つは特定建築物(一定規模以上の非住宅建築物で、政令で2,000㎡以上のもの)を新築または増築しようとする場合、省エネ基準に適合していることが義務づけられ、適合しない場合は建築確認が下りません。また、300㎡以上2,000㎡未満の中規模の住宅および非住宅の新築及び増改築については、省エネ基準に適合するための計画を行政庁に届け出をする義務が課されます。基準に適合しない場合は、行政庁から是正の指示・命令を受けることになるので、事実上、適合していることが建築の要件になります。一般のほとんどの住宅が当てはまる「300㎡以下の小規模建築物」については、従来同様「努力義務」とされていますが、今後2020年には義務化になると予想されています。

2017年4月施工予定
規制措置
特定建築物(一定規模以上の非住宅建築物。政令案では2,000㎡以上) 省エネ基準適合義務・適合性判定(新設)
  • 新築時に省エネ基準への適合義務
  • 基準適合について行政庁または登録省エネ判定機関の判定を受ける義務
  • 適合しない場合は建築確認を受けられず着工不可
その他の建築物(一定規模以上の建築物。政令案では300㎡以上) 届け出義務
  • 一定規模以上の新築、増築に関わる計画の行政庁への届出義務
  • 省エネ基準に適合しない場合、行政庁が是正を指示・命令
住宅事業建築主が新築する一戸建て住宅(戸数の多い建売分譲住宅を建てる事業者向け) 住宅トップランナー制度
トップランナー基準に適合しない場合、大臣が勧告・公表・命令
誘導措置 基準適合認定・表示制度(新設)
建築物の所有者は、建築物が省エネ基準に適合することについて行政庁の認定を受けると、その旨を表示できる
性能向上計画認定・表示制度(新設)
新築または改修の計画が、誘導水準に適合することに行政庁の認定を受けると、容積率の特例(省エネ性能向上のための設備について、通常の建築物の床面積を超える部分を不算入)を受けることができる