不動産オーナーが知っておくべき少子高齢化時代の消費者ニーズと対策について

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日本ではここ数年、少子高齢化が叫ばれています。平成27年10月1日時点での高齢者人口(65歳以上)は26.7%、年少人口(0-14歳)は12.7%と、既に4人に1人は高齢者という少子高齢化社会となっていることに加え、2025年には団塊の世代が75歳を超えることから、さらに高齢化が加速するとみられています。

内閣府の発表では、平成2060年には2.5人に1人が高齢者になると予測されていることもあり、歯止めが利かない状況です。

そこで今回は、少子高齢化がどのような変化をもたらすのか、不動産オーナーに役立つ今後の不動産市場について考えてみたいと思います。

参考:内閣府「平成28年版高齢社会白書」 第1節 高齢化の状況

「夫婦二人だけ」の家庭が急増し、1-2部屋のマンション・アパートが人気に

昨今では、子供がいない・子供を作らないという家庭が増えています

従来と比べて働き方が多様化していることもあり、女性がフルタイムで働くことが当たり前になったほか、共働きの家庭も多くなりました。子供を作らない共働き夫婦を「DINKS(ディンクス)」と呼びますが、この言葉も一般化してきています。

実際に、厚生労働省の「平成27年 国民生活基礎調査」によると、平成27年における夫婦のみの世帯は11,872世帯と、平成10年の8,781世帯から1.35倍に増えており、子供のいる世帯がほぼ横ばいなのに比べて増加が目立っています。

こうした影響から、「二人だけの住まい」への需要も高まっていることがわかります。

夫婦二人の場合、2LDK-3LDKほどの住空間を選ぶケースが多く見られます。そのため、一戸建てよりも部屋数の少ない分譲マンションや賃貸マンション、アパートなどが主な選択肢となるようです。

これを裏付けるように、国土交通省の発表では特に東京圏において、4部屋以上のマンションの割合が減り、1部屋や2部屋といった部屋数の少ないマンションの販売割合が上昇傾向にあるのです。

特に都会や首都圏であれば、こうした共働き夫婦は多くなる傾向にあります。そのため、地域によっては部屋数の見直しや、空室率が気になるようであればリフォームを検討するなど、対策をする必要があるかもしれません。

参照元:政府統計の総合窓口

「経済的支援」「保育施設の充実」を重視する子育て世帯をターゲットにするならファミリー向けの物件

子育て世代の核家族化が進み親と同居する世帯が減少していることから、親に子育てを手伝ってもらうケースが減っていると考えられます。

こうした状況下で、子育て世帯が住まいを選ぶ際に重視する主なポイントは、地域の経済的支援があるかどうか、保育施設が充実しているかどうかの2点です。

経済的な子育て支援

経済的な子育て支援が充実している行政区は、子供を持つ親にとって魅力的です。

例えば、東京都江戸川区では42万円まで出産費用の助成があり、月額1万3千円(12回まで)の乳幼児養育手当が支給されます。幼稚園の費用も、私立と公立の差額を助成する制度があり、入園料8万円、保育料月額2万6千円を上限に補助金を受け取ることができます。

これら助成制度の効果か、江戸川区は子育て世代に人気があり、東京都区部における平成27年の特殊出生率は港区、中央区に次いで第3位となっています。

今の子育て世代は、インターネット上で「子育てしやすい街のランキング」をチェックしたり、各自治体の子育て支援施策の情報を集めたりして、住まい探しの参考にしているようです。

私立幼稚園への補助 その他注目の支援
港区 保護者補助金:最高24万2,400円/年
  • ショートステイ・トワイライトステイあり
  • 出産費用の助成(60万円まで)
  • 特定不妊治療助成(1年度あたり30万円・通算5年)
  • 育児サポート子むすび(育児支援希望者と協力者を結ぶ事業)
  • 認定こども園数/0
中央区 区立のみ
  • ショートステイ・トワイライトステイあり
  • 出産支援祝品(タクシー利用券1万円分)
  • 新生児誕生祝品(区内共通買物券3万円分)
  • 認定こども園数/2
江戸川区
  • 入園料補助金:最高8万円
  • 保育料補助金:最高2万6,000円/月
  • ショートステイあり
  • 乳児養育手当(ゼロ歳児)0歳児を養育している世帯に 1万3,000円/月 ※ひとり親への支援
  • 認定こども園数/1

参照元:東京23区の子育て支援制度を徹底比較!子育て支援が手厚い地区は?

保育施設の充実

女性の就業率や夫婦共働き率が高くなっている現代の子育て世代にとって、子供を預けて働くための保育施設は必須です。しかし、保育施設数が多くても、空きがなければ子供を預けられません。現実的には、地域の待機児童数が少ないことが住まい探しの条件となるでしょう。

先に紹介した江戸川区には、区の認定を受けた保育ママが自宅で子供を預かる「保育ママ制度」があるほか、同様の施策を行っている自治体も増えています。その他に、小学校の放課後や休校日に児童を預かる学童保育などの有無や充実度も重視されています。

こうした行政区には、子育てに適したファミリー向けの物件を用意しておくのも、空室回避の手段として有効でしょう。ファミリー向けの物件は、退去率が少ない、滞納リスクが低い傾向にあるといったメリットがあるため人気もあります。

さらに物件の魅力を高めるため、アパート内のコミュニケーションを活発にする施策や、交流できる場を設けている物件も増えてきています。

シルバー世代をターゲットにするなら、アクセスや商業施設の充実が鍵

高齢者の住まいは大きく分けて、一人暮らし、夫婦二人、子供と同居の3つに分かれます。

そのうち、厚生労働省統計情報部『国民生活基礎調査』によるデータでは、子供と同居しているのは全体の41%、夫婦のみで暮らしているのは38%、続いて配偶者がいない単独世帯が16%という結果になっています。

今後は単身のシルバー世帯が増えることが予想されるので、単身あるいは夫婦二人にフィットする住宅の需要が高まることが予想されます。そのため、若い単身者とはひと味違った単身の高齢者に配慮した賃貸住宅経営を視野に入れるのもよいでしょう。

高齢者に必要な住環境には、病院や介護施設などが充実していること、買い物が不便なく行えることなどが挙げられます。

さらに内閣府による調査では、日常的な外出を希望する人は61.3%で、「あまり外出したくない」の28.3%を大きく上回っていることから、日々の楽しみのひとつに「外出」があることがわかります。そのため、各施設へのアクセスの良さも大切な要素でしょう。

普段の楽しみとして「スポーツ観戦、観劇、音楽会、映画が普段の楽しみ」という人が21.8%、「スポーツ活動」が20%強、「主に野外で行う趣味活動」が19.9%と、意外にアクティブな生活をしていることがうかがえます。

シルバー世代がアクティブな生活をより楽しむには、目的地までの距離や交通アクセスの利便性が重要です。また、スポーツ観戦や音楽、映画、ショッピングなどを楽しむための施設が充実しているかどうかが、住まい選びのポイントになっていくかもしれません。

参考:内閣府「平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査結果」

まとめ

今後も少子高齢化社会は加速していくと予想されていますが、それに合わせて各家庭が求める住居も様変わりしていくでしょう。

こうした需要の変化によって、不動産のあり方も変化していくかもしれません。今後は、時代のニーズを読んだ不動産の運営が、より必要とされていくでしょう。