高額な死亡保険はもう古い!?生命保険の新常識は『自分らしい保険に加入する』こと

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日本人の生命保険への加入率は高い

生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(2013年度)」によると、生命保険に加入している人は男性で80.9%、女性では81.9%となっています。前回(2010年度)の調査に比べ男性は1.9ポイント、女性は2.4ポイント増加しています。

この80%を超える加入率は世界でも非常に高く、例えば英国などでは40%程度といわれています。

働く女性が多く、また、個人が自立して人生を歩むというマインドが歴史的に強いヨーロッパでは、生命保険で家族に現金を残すという発想は日本ほど強くありません。

しかし最近は少し事情が変わってきました。日本でも生命保険を違う目的で見直す人が増えているのです。

 

死亡後よりも、生きるための保険へ

従来は、死亡保障が1,000万円、2,000万円といった高額の死亡保険に、あまり詳細な検討も行わずに加入する人が少なくありませんでした。

しかし最近は「それほど高額のお金を残す必要があるのか?」ということから、改めて、何歳くらいの時にいくらあればよいのか、ということを考える人が増えています。

そして、それぞれの家族の年齢構成や働き方、特長に合わせて必要と思われる保険金を厳密にはじき出し、毎月の支払額を抑え、今の暮らしを充実させることを多くの人が考えるようになっています。

また、その見直しを、死亡後に家族にいくら残すのかではなく、自分が病気やケガをしたときにその経済的なダメージをいかに小さくするか、という視点で行う人も増えています。

つまり、死んだ後の家族のためではなく、自分がどう生きるかということに保険を使うという視点から保険の加入・見直しを検討するようになっているのです。

その一つの表れが、保険の「第3分野」に分類されるガン保険の急成長です。

民間保険の3つの分野

第一分野
  • 死亡保険(終身、定期)
  • 生存保険(個人年金保険、貯蓄保険)
  • 生死混合保険(養老保険など)
生命保険会社だけが取り扱う
第二分野
  • 自動車保険
  • 火災保険
  • 自賠責保険
  • ペット保険など
損害保険会社が扱う(生保会社は扱えない)
第三分野
  • 医療保険
  • がん保険
  • 傷害保険
  • 介護保険など
生保、損保会社がいずれも扱うことができる

大きく伸びているがん保険

過去3年間の保険契約の推移(下表)を見ても、がん保険が大きく伸びていることが分かります。日本では2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで死亡するといわれています(全国健康保険協会ホームページ)。しかし、早期発見や的確な治療で、治癒する確率も非常に高くなっている中、仮にがんにかかっても、安心して治療を受けたいと考える人が増えています。

個人保険の種類別新契約件数の推移(単位 万件)

2013 2014 2015
終身保険 337 347 357
定期付終身保険 23 15 14
利率変動型積立終身保険 39 31 31
定期保険 222 224 212
変額保険 9 17 39
養老保険 166 134 146
医療保険 383 381 362
がん保険 139 177 224
子ども保険 56 101 84
その他 62 73 113
契約総件数 1,440 1,505 1,585

「生命保険の動向」2016年版 (一社)生命保険協会

「がん保険」のなかでも、長期間の入院保障をつけるものより通院日数を長期間保障するタイプの商品が人気です。これは、最近のがん治療が長期入院を必要とするものから、通院で治療するものに変わってきていることを反映しています。

また、がんの先進医療が一般的になるに従って、こうした高度医療をカバーする保険にも人気が集まっています。

しかし、こうした高度医療は非常に高額で一般の保険治療の対象ではありません。そこで、必要なときにはこの治療が対象となる保険も人気を集めています。

民間の介護保険も登場

国が運営する公的介護保険は、40歳になれば加入が義務付けられています。誰でも介護状態になれば、その程度に応じて保険料が支払われます。

この公的介護保険ですが、要介護者が増える中、保険財政を維持するため、2015年8月から、一定以上の収入のある人については自己負担の割合が1割から2割に引き上げられました。今後もさらに引き上げられるのではないかと見られています。

2000年の公的な介護保険のスタートと同時に、それを補う目的で民間の介護保険商品も発売されてきました。加入率は低かったのですが、最近の公的介護保険の負担増などを背景に改めて注目を集め、商品の種類が増え加入者も徐々に増えています。

民間の介護保険とは「保険契約に定める所定の要介護状態になった場合、現金を受け取れる保険」です。主な特長は下記の通りです。

民間の介護保険商品の概要

【加入方法(3タイプ)】

  • 終身保険などの主契約に「介護の特約」を付加する
  • 主契約として「介護保険」に加入する
  • 終身保険などの保険料の払込満了時点で介護保障に移行する

【給付方式(3タイプ)】

  • 一時金(介護一時金)
  • 年金(介護年金。受取期間は10年などの一定期間、または保険期間満了までとするものと終身の2種類)
  • 一時金と年金の併用

【所定の要介護状態とは】

  • 保険会社が定める所定の「寝たきり」と「認知症」状態が対象
  • 要介護状態が、保険会社が定める所定の期間継続していることが給付の要件(公的介護保険の要介護認定に連動して給付を受けられるタイプもある)

【保険期間(2種類)】

  • 有期(10年、20年など一定期間、または70歳、80歳など一定年齢まで)
  • 終身

公益財団法人 生命保険文化センターの資料を基に作成

家族のための当たり前のように、そしてほぼ一律の高額な生命保険に加入していた時代はもう過去のものになりつつあります。よりよく生きるために、そしてどのような保障が必要かを厳密に検討しながら自分らしい保険に加入する----それが生命保険の新しい常識になっています。