老後の暮らしに掛かる費用と必要なお金はいくら?長期的な資産計画や運用が大切

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高齢者世帯の家計はどうなっている?

65歳以上で、年金以外に収入のない高齢者世帯の毎月の収支はどうなっているでしょうか。

総務省「家計調査」から二人以上の高齢無職世帯について、平成25年の1世帯当たり平均1か月間の家計収支をみると、下の表のようになります。

資料:総務省「家計調査」(家計収支編)
※「その他」には、家賃収入や利子、仕送り金の受取などが含まれる。
注1)金額及び構成比は、表示単位に四捨五入してあるので、内訳の計は必ずしも合計に一致しない。
注2)図中の「社会保険給付」及び「その他」の場合(%)は、実収入の内訳である。

実収入は、217,412円です。

内訳をみると、公的年金などの社会保障給付が9割近くを占め、そのほかに家賃収入や仕送り金の受取などが含まれます。また、実収入から税金や社会保険料などの「非消費支出」を差し引いた可処分所得(手取り収入)は、187,098円となっています。

一方、消費支出は246,085円と、可処分所得よりも毎月58,986円多くなっています。つまり、毎月約6万円の赤字で、この赤字分は金融資産の取崩しなどで賄われています。

高齢者世帯の貯金はどのくらいある?

「高齢者白書」によれば、平成26年の貯蓄額、1世帯当たり平均で2,499万円となっています。もっとも、この1世帯当たり平均の貯蓄高は、貯蓄額の多い世帯によって引き上げられています。

最も人数の多い中央値をみると1,588万円となり、ここが一般的な、いわゆる「ボリュームゾーン」です。月額約6万円の赤字が12ヶ月で、年間72万円。20年この状態が続いても貯金で賄える計算です。

しかし、この計算は、まったく病気をせず、介護も受けずに自宅で最後まで過ごすことが前提です。そういう人生を送ることができる人は決して多くはありません。

世界トップクラスといわれる日本人の平均寿命も、介護を要しない「健康寿命」では、女性で約12.6年、男性で約9年も短くなります。つまり、多くの人が10年間程度は介護を受けながら人生の終盤を過ごすことになるのです。

その場合には、当然介護保険を利用しながら、ということになります。しかし、いくら介護保険があっても、介護関連費用がゼロになるわけではありません。

実際どれくらいの費用が介護保険外の自己負担となっているか、生命保険文化センターの「介護保険ガイド」(平成24年版)から見てみましょう。

費用はどのくらいかかるもの?

設備などの固定費用(一回の出費)に平均91万円

まず、実際に介護を経験した人が自宅の増改築や手すりの設置、さらに介護用品の購入などにかけた一時費用がいくらくらいであったかを見ると、平均91万円です。

毎月の介護費用として平均7.7万円

さらに加えて、月々かかる費用があります。この費用は、公的介護保険の自己負担を含め平均で1ヵ月あたり7.7万円という結果になっています。

先ほどの一般高齢者世帯の毎月の生活費の赤字分6万円と合わせれば、約14万円が不足することになります。

そして、この月額平均7.7万円の出費がどれくらい続くのかを見ると、同センターの調査では56.5ヵ月(4年9ヵ月)となっています。

この場合の支出額は以下のようになります。

しかし、56.5ヶ月という数値には、現在進行形で介護を行っている人も含まれています。実際にはもっと長期間、介護が続く可能性があるのです。

先ほどご紹介した健康寿命と平均寿命の差が約10年。やや低く見積もっても、100ヶ月の介護期間があると予想することができます。

その場合の支出額は以下のようになります。

老人ホームに入るといくらかるか?

上記の計算は在宅で介護を受けたときの概算です。しかし、家族の手で最後まで介護するのは負担が大きく、その場合は介護付きの有料老人ホームなどに入所することになります。一般に、要介護3以上になると、一人暮らしは難しいと考えられています。

程度 要介護度 身体の状態
軽度 要支援1 日常生活の排泄や食事はほぼ自分でできるが、身の回りの世話の一部に介助が必要。
要支援2 日常生活に一部介助が必要だが、要介護には至らない状態。
要介護1 立ち上がりや歩行が不安定で生活の一部に部分的介護を必要とする状態。
中度 要介護2 立ち上がりや歩行が自力では難しい。排泄、入浴などに一部もしくは全て介助が必要。
要介護3 立ち上がりや歩行が自力ではできなく、重度の介護を必要とする状態。
重度 要介護4 重度の介護を必要とする状態。日常生活能力の低下がみられ、排泄、入浴、着替えなど全般的に全介助が必要。
最重度 要介護5 最重度の介護を必要とする寝たきりの状態。日常生活全般に渡り全面的な介護が必要。

介護が必要になってから入所する代表的な施設

施設名 概要 費用の目安
介護付有料老人ホーム 一般的な民間の有料老人ホーム。個室があり、食事などの生活サービスを受けられるほか、介護サービスも受けられる。 費用は月15万~30万円程度。入所時に一時金が必要な施設もある。
介護老人福祉施設(特養) 低料金で入所・生活できる公的施設。要介護3以上と入所の条件は厳しい。順番待ちになることが多い。 費用は月5万~13万円程度

上の表に見るように、多くの人が利用する民間の介護付き施設は、ボリュームゾーンを見れば、月額で20万円~25万円程度がかかると見られています。施設によっては、もう少し高いところもあり、平均的な年金額では賄いきれません。

また、施設では手厚い生活支援や介護が受けられることから、入所年数は伸びる傾向にあり、施設で100歳を迎えたという人も少なくありません。少なくとも5年(60ヶ月)程度は、施設内の生活になると言えるでしょう。

その他、入所の際の一次金や身の廻りを整えるために必要となる費用、介護者がそこに通う交通費なども発生します。

在宅で8年過ごして最低で900万円近く。その後5年間介護施設に入れば1,500万円程度かかります。合計で2,400万円。

毎月の年金では不足する生活費や、介護にかかる費用のすべてを貯金を取り崩しながら賄うことになります。

長寿化が進む中、90歳を超えて生きる人は珍しくありません。蓄えが底をついてしまうことも考えられます。「長寿がリスク」にならないよう、健康に配慮することはもちろん、長期的な資産計画や運用を見据えたライフプラン設計が必要になっているのではないでしょうか。