企業版「ふるさと納税」の賢い活用方法とは

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地方創生を実現するための「応援税制」の新設

さまざまな返礼品が話題になっている「ふるさと納税」。その企業版とも言える制度が創設され、2016年4月20日に法律が公布されました。今年の夏頃から本格的に稼働します。

名称は「地方創生応援税制」。地方自治体が実施する一定の地方創生事業に対する企業の寄附に対して法人関係税を従来の2倍軽減し、現在の日本の戦略的課題となっている地方創生事業に対して民間資金の新たな流れを巻き起こすことを狙いとしています。

この企業版ふるさと納税は、地方自治体に対する寄附ではなく、地方自治体が実施する地方創生プロジェクトに対する寄附となっています。この夏頃に寄附の対象となる地方創生プロジェクトが国によって認定され、それに対して寄附ができるようになります。ただし、金額が10万円以上であること、寄附しようとする企業の本社所在地の自治体の事業には寄附できない、といった決まりがあります。また、財政が豊かで国からの交付税を受けない「地方交付税の不交付団体」(東京都三鷹市、立川市、神奈川県鎌倉市、愛知県豊田市など、2015年度は全国で60団体*)は、対象になりません。

*「地方交付税の不交付団体」一覧はこちらを参照

従来の寄附に比べ約2倍の節税効果

企業版ふるさと納税の節税効果は、従来の約2倍です。これまでも地方公共団体への寄附は「全額損金算入」ができました。そのため、たとえば100万円を寄附すれば、実効税率が30%の場合、30万円の節税効果がありました。企業版ふるさと納税では、これに加えて法人住民税について寄附額の2割を税額控除。さらに法人事業税について寄附額の1割を税額控除します。これによって寄附額の約6割に相当する額が軽減されることになります。

もう少し具体的に節税効果を見ておきましょう。

分かりやすくするために簡略化していますが、たとえば、年度末に200万円の利益があったとします。100万円を「ふるさと納税」すれば、法人税の実効税率が約30%として、損金算入による節税と税額控除によって60万円の節税となり、法人税は(100-60)×30%=12万円。手元には88万円が残ります。

同じように200万円の利益があり、100万円を地方公共団体に寄附した従来の場合は、法人税の実効税率が約30%として、損金算入による節税によって30万円の節税となり、法人税は(100-30)×30%=21万円となり、手元には79万円が残ります。

200万円を何も寄附しなかった場合は法人税が60万円となり、手元には140万円が残ります。この3つのケースを図にすると、次のようになります。

「手元のキャッシュは減る」ことには留意

「企業版ふるさと納税」を使って寄附をすれば、従来の寄附に比べ節税効果は倍になります。しかし、上の比較で見たように、法人税額は大きく減っても、100万円を寄附として拠出したのですから、手元に残るキャッシュは、寄附をしなかった場合に比べれば減ることになります。地方創生事業を寄附によって応援するという意味で、ふるさと納税は大きな社会的意義を持っており、企業のCSR活動としても意義があります。しかし、経営上、キャッシュを手元に置きたい場合があることは言うまでもありません。節税効果を取るか、手元にキャッシュを残すことを取るかは、よく考えることが必要です。

なお、寄附の代償として経済的な利益を受け取ることは禁止されています。また、企業が地方自治体から「返礼品」などを受け取った場合は「法人からの贈与」という扱いになり法人税がかかるので注意が必要です。