建築物の省エネ性能が可視化!半年後に迫った「建築物省エネ法」完全施行

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省エネ法制度は激変する?

2015年7月1日、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律案(建築物省エネ法)」が成立しました。

日本では、産業・運輸部門などではエネルギー消費量が減少していますが、建築部門は増加の勢いが止まりません。そのため、建築物に対する抜本的な省エネ対策が講じられることになり、新法が制定されました。

新法では大きく2つの制度が新設されました。

1つは建築物の省エネ性能の表示制度。もう1つが、一定の省エネ基準を持たない建物は建築を認めないいという規制制度です。2016年4月1日に前者の表示制度がスタート。2017年4月1日には後者の規制制度がスタートします。

2016年4月に始まった「建築物のエネルギー消費性能の表示制度」(省エネ性能表示制度)では、住宅販売や賃貸事業者に対する建築物の省エネ性能の表示の努力義務が規定されています。

表示方法は、第三者認証ラベル「BELS(ベルス | Building-Housing Energy-efficiency Labeling System )」というもので、星の数で建物の燃費を表します。

定められた計算方法で、一次エネルギー消費量を算定し、建物の省エネ性能を5段階の星マークでランク付けする仕組みです。星の数が多いほど、一次エネルギー量の消費が少ないことを示しています。

一次エネルギーとは

一次エネルギーとは、自然から直接得られる石油や天然ガス、石炭、太陽光などのエネルギーのこと。それを加工して得られるのが電気や都市ガスなどの二次エネルギー。

この表示を利用すれば、住宅やオフィスビル等の建築物の省エネ性能を示し、国が定める基準以上の省エネ性能を保有していることをアピールすることができます。

また、「建築物エネルギー消費性能基準適合認定建築物」という表示で、既存住宅や既存建築物(オフィスビルなど)の改修時等においても、国が定める基準以上の省エネ性能をもっていることをアピールすることができます。

さらに、2017年の4月からは、延べ面積2,000㎡以上の新築の非住宅建築物に対して、省エネ基準の適合義務化が始まり、2020年までには戸建て住宅を含むすべての新築の建築物で適合義務化が行われる予定です。

義務化ということになれば、耐震や防耐火などと同様に、この省エネ基準を満たさない建物は建築確認が下りなくなるわけです。これまで、省エネについては義務化が行われてこなかったので、この点は建築行政の大きな転換ということになります。

2017年4月
施行予定
規制措置 特定建築物(一定規模以上の非住宅建築物。政令案では2,000㎡以上) 省エネ基準適合義務・適合性判定(新設)
・新築時に省エネ基準への適合義務
・基準適合について行政庁または登録省エネ判定機関の判定を受ける義務
・適合しない場合は建築確認を受けられず着工不可
その他の建築物(一定規模以上の建築物。政令案では300㎡以上) 届け出義務
・一定規模以上の新築、増築の関わる計画の行政庁への届出義務
・省エネ基準に適合しない場合、行政庁が是正を指示・命令
住宅事業建築主が新築する一戸建て住宅 住宅トップランナー制度
トップランナー基準に適合しない場合、大臣が勧告・公表・命令
現行(2016年4月施行済み) 誘導措置 基準適合認定・表示制度(新設)
・建築物の所有者は、建築物が省エネ基準に適合することについて行政庁の認定を受けると、その旨を表示できる
性能向上計画認定・表示制度(新設)
・新築または改修の計画が、誘導水準に適合することに行政庁の認定を受けると、容積率の特例(省エネ性能向上のための設備について、通常の建築物の床面積を超える部分を不算入)を受けることができる

今後は省エネ性能が重要項目に

一定の省エネ性能の保有を義務化することは、いうまでもなく建築物の省エネ性能の向上につながります。

つまり、建築物のエネルギー消費性能の見える化が図られ、比較され、性能のすぐれた建築物が市場で適切に評価されて選ばれる時代になるということです。

例えば、賃貸マンションやアパートを探す際、この省エネ性能表示の有無やその表示内容を吟味して、入居者はより性能のすぐれた住居を選択する時代になるでしょう。その方が、冷暖房費が安く、暮らしやすいと考えられるからです。

ということは、新築のみならず既存の建築物でも、リフォームなどをして省エネ性能基準を満たす必要性が出てくることになります。そうしておかないと、選ばれる土俵にも乗れないということになるかもしれません。

また、今後想定されるのは、この省エネ性能基準がレベルアップすることです。現在、義務化が予定されている基準は、欧米に比べれば決して高いものではありません。徐々に高められていくと考えておくことが必要でしょう。

現行の省エネ基準での適合では、将来的には不十分な内容となりかねません。単に現行基準をクリアするのではなく、その先を行く心構えも必要になると思います。

これからは燃費性能で住宅を選ぶ時代に

ガソリン1リットルで何キロ走行するのか?という自動車の燃費性能は、みなさんよくご存じかと思います。

これからは、住宅も同様に燃費性能が入居や購入等の判断基準となる時代になります。

現に、あるマンションデベロッパーは、住戸ごとに冷暖房費が一目でわかるような資料を作成し、マンション販売を進めています。価格表や専有面積の一覧表の中に、燃費性能が書かれているのです。

こうした表示が進むことで、一般にマンションでは最上階や角部屋の住戸に人気が集まりがちですが、実は、屋上の蓄熱の影響を受けやすく暑い最上階や、ガラス窓が多い角部屋は、燃費性能面では、性能が劣ります。

これからは、燃費性能がよい住戸に人気が集まるという可能性も考えられます。

いずれにしても、今後は建築物や住宅に係る省エネ性能が耐震性能などと同様に大きな選択基準の1つとなると考えておく必要があるでしょう。

<参考資料>

国土交通省:建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)の概要