2才まで育児休業が取れる!平成29年10月スタートの改正育児・介護休業法

  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア

保育所などが見つからず、育児のために会社を退職しなければならないとしたら、女性の社会進出もままなりません。

そのような事態を防ぐため、育児休業を取りやすく、さらには育児世代の男女労働者が快適に働ける職場環境を目指して育児・介護休業法が改正されました。

今回は、平成29年10月から適用される改正事項を中心にお伝えしたいと思います。

そもそも育児介護休業法とは?

育児介護休業法は、正式には「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」という名称の法律です。この法律は、育児や介護を行う労働者が仕事と家庭を両立できるように支援し、日本の経済および社会の発展を促すことを目的としています。

しかし、特に育児に関していえば、従来の制度では、育児休業を取得できる期間内に保育所が見つからないため職場復帰を諦めたり、そもそも育児休業が取得しにくい雰囲気があるため、職場での居心地が悪くなったりすることもありました。

このような弊害を取り除くため、今回の改正では、育児休業の再延長などを定めるとともに、事業主に対しても一定の義務を課すなど、いくつかの見直しが行われました。

2才まで育児休業が取得可能に!

現行制度では、育児休業は、原則として、子どもが1才に達するまでの期間となっています。その上で、保育所に入れない場合などには、例外的に、子どもが1才6か月に達するまで育児休業期間を延長できることになっています。

ただ、保育所への入所は一般的に年度初めであるため、それを前に1才6か月を迎えると、保育所に預けることができないまま育休期間も修了してしまうことになりかねません。

そこで、今回の改正では、1才6か月に達した時点で保育所に入れない場合などには、再度申し出ることで、育児休業期間を最長2才まで延長できるようになりました。

それに合わせて、育児休業給付金も2才まで支給されるように改められています。つまり、仮に12月で1才6か月を迎えても、再延長で4月から保育所が見つかる可能性があるということになります。

なお、改正によって、育児休業が最長2年となるものの、キャリア形成の観点からは長期間の休業が従業員自身にとっても望ましくないことは十分考えられます。

そこで、労使間の話し合いの過程で、事業主が従業員の事情やキャリアを考慮して早期の職場復帰を促すような場合は、育児休業に関するハラスメントに該当しないという指針も合わせて設けられています。とはいっても、職場復帰のタイミングは従業員本人の意思が尊重されることには留意が必要です。

会社側には育児休業制度について説明する努力義務も

三菱UFJリサーチ&コンサルティングが実施した平成27年度「仕事と家庭の両立に関する実態把握のための調査」によると、労働者が育児休業を取得しなかった理由として「職場が育児休業制度を取得しづらい雰囲気だったから」と回答した人の割合が男性正社員で26.6%、女性正社員で30.8%という結果が得られました。

そこで、職場に育児休業を取得しづらい雰囲気があることが原因で取得を断念することがないように、事業主に対して、対象者に育児休業の取得を周知し、勧奨する努力義務が設けられました

こうした周知や勧奨は、事業主が従業員やその配偶者が妊娠したと知った場合に行われます。プライバシーに関することなので、基本的には従業員側から知らせることを想定した規定となっています。事業主からの説明内容は、具体的には、育児休業中のサポートや休業後の労働条件などが考えられます。

法改正で育児目的の休暇が増える?

育児に関する休暇は女性だけを対象とするものではありません。男性も積極的に育児に関与できる環境づくりが求められます。休暇制度としては、育児休業以外にも、子どもの看護休暇などがあります。

しかし、看護休暇は子どもが病気になったというような事情がない限り、利用することができないのです。結局のところ、配偶者が妊娠や出産をした際に男性が取得する休暇制度としては、通常の有給休暇などが多く利用されています

休暇取得のニーズ自体は存在するので、男性の育児参加を促すためにも、就学前までの子どもを有する労働者が育児に広く利用できる休暇を新設する必要があります。

そこで、改正法では事業主に、育児に関連する目的で利用できる休暇制度を設ける努力義務を定めました。たとえば、子どもの参観日などに休暇制度を利用することも可能となります。

従業員としては、平成29年10月から適用される新制度を知って賢く利用したいところです。また、事業主にとっては、どのような対処が必要か理解し、職場環境や規程を整備することがコンプライアンス上も重要になるのではないでしょうか。