アパートの建て替えで立ち退き問題とは?オーナー目線で考える具体的な解決策

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一般のアパートオーナーで「アパートの建て替えは何度もやっているので手慣れている」という人はほとんどいないでしょう。

建て替えをしよう考えたなら、数多くのハードルが存在することに気がつくかと思います。その中でも一際大きなハードルとなるのが「立ち退き問題」への対応です。

入居者が立ち退きに応じない場合

アパートを建て替えるにあたっては、当然ながら現在入居している人に立ち退いてもらい、部屋を空ける必要があります。

しかし「立ち退き」というのはあくまでオーナー側の都合であり、入居者に非がない場合が一般的。入居者の権利が法律によって保護されているため、法的な強制力をもって「立ち退かせる」のは簡単ではありません

オーナー側から賃貸契約の解約をするためには、それ相応の「正当な理由」と、「一定程度の補償」を行うことが必要になるのです。

退居を要求するためには「正当事由」が必要

アパートの賃貸借契約では2年などの契約期間を定めることが一般的です。「契約期間が満了になったから入居者に立ち退いてもらえる」と思われるかもしれませんが、なかなかそうはいかない場合が多いのです。

賃貸人であるオーナー側から契約の打ち切りを申し出たとしても、入居者がそれを拒否した場合、期間満了後も契約は更新されていくのが原則となっています。

オーナー側から賃貸借契約を終了したいと思った場合には「正当事由」が求められます。

では、何が「正当事由」となり得るのか。たとえば「老朽化による耐震性の不足」などが考えられるかもしれませんが、最終的には裁判での判断に委ねられるため、個々のケースによって変わります。

裁判所で考慮される要素としては、「オーナーと入居者が建物使用を必要とする事情」「賃貸借に関する過去の経緯」「建物の利用状況」などが挙げられます。

また、明け渡しの条件として給付される立ち退き料の金額も考慮要素です。つまり、十分な立ち退き料を用意した方が正当事由を認められやすくなるということです。ただし、正当事由の有無に関する具体的な判断はケース・バイ・ケースともいえます。

また、解約の申し入れは原則として契約期間満了1年前から6ヶ月前までに行う必要がありますので、その点にも注意が必要です。

「正当事由」と認められる事例、認められない事例

例えば、UR都市機構の集合住宅で、貸主側が耐震強度不足を理由に建て替えのための明け渡しを求めた訴訟において、貸主側の勝訴となった事例があります。

耐震改修を求めた何世帯かの入居者に対して行われた明け渡し訴訟でしたが、「耐震改修では費用が過大になる」という貸主側の主張が認められ、正当事由ありと判断されたケースということができます。

逆に、正当事由が認められない例もあります。

とある木造の店舗物件の事例では、建物が朽廃して倒壊する危険性が高いという理由で立ち退きを求めましたが、正当事由が否定されました。

入居者側は「長年の営業で獲得してきた顧客があり、今後の営業においても当該建物が必要である」として、通常の補修工事を希望。この入居者側の主張が認められた地裁判決があり、補修で対応できる朽廃具合であるという事実認定がなされたことになります。

上記のように「耐震性・老朽化などによる建物の安全性」という観点から見ても、その結果は様々。判例はひとつの参考になりますが、自身のケースに合わせた柔軟な対応が求められます

立ち退き料について

上記のように、倒壊などの危険性で正当事由が判断されるほか、オーナーや入居者の個別事情なども考慮して判断されます。

例えば、オーナー家族が住むための不動産がなくて困っている場合や、逆に入居者側の事情で引っ越しが困難な状況にある場合などです。

また、オーナー側が引っ越しのあっせんや費用負担、立ち退き料の支払いを提示することで正当事由が認められることもあります。

立ち退き料の相場

立ち退き料の算定には明確な基準はありません。相場も、あってないようなものです。少額の立ち退き料を提示して相手が承諾し、スムーズに問題が解決する場合もあります。

一方で、入居者がなかなか納得しない場合、交渉の結果として立ち退き料が多額になる場合もあります。残念ながら、入居者の「ゴネ得」といった状況もない訳ではありません。

まとめ

アパート建て替えに伴う入居者への立ち退き要求問題。過去の判例や実例はさまざまありますが、事情も違えば、解決に至るまでの経緯も個々によって様々です。オーナーと入居者の些細なコミュニケーションのすれ違いで、立ち退きが難航してしまう場合もあるでしょう。

法律知識を踏まえたうえで慎重に事を進める必要があり、加えて時間と労力が掛かることも踏まえると、オーナーだけで解決するのは難しいものです。そのため、豊富な経験を有する不動産会社などのサポートを得ながら円滑に進めるのが得策といえるでしょう。

特集:「アパート建て替え」の成功のカギ

第1回経営しているアパートを建て替えるべきだと判断するポイント
第2回アパートの建て替えを実施するために必要な手続きと流れ
第3回アパートの建て替えで立ち退き問題とは?オーナー目線で考える具体的な解決策
第4回リフォーム?売却?使い道が難しいアパートの建て替え以外の選択肢とは?

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