意外と勘違いの多い「空室率」の計算方法!5つの空室率を使いこなそう

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マンションや貸しビルを購入し、不動産賃貸業を始めようというときに「空室率」という言葉の壁に突き当たることになります。

すべての部屋数のうち、どれだけ空室があるかを示した割合」というのは、およそ想像がつくでしょう。しかしこの数字の意味を正確に理解していなければ、「こんなはずじゃなかったのに......」となりかねません。

そこで今回は、空室率のカラクリを解き明かしていきましょう

そもそも空室率とは

不動産賃貸において、収益の最大化を目指すためには賃貸不動産の稼働率を上げること、つまり空室をいかに少なくするかということが重要です。

物件を選ぶにあたっては空室率が肝となりますが、肝心の空室率を計算するための基準は意外にも定まっていません

いくつもの考え方があり、状況によってさまざまな基準が使われているというのが現状です。

基本的に空室率は、以下のように定義されます。

この空室率には、「瞬間空室率」、「稼働平均空室率」、「戸数ベースの空室率」、「床面積ベースの空室率」、「賃料ベースの空室率」などさまざまな定義が存在します。

同一の物件であっても、上記の5つの空室率の数字が全く同じになることはないので注意が必要です。どのようなタイミングで空室率を計算するのか、面積を基準に知るのか、それとも賃料を基準にするのか、物差しを変えることで数字が全く変わってしまいます。

だからこそ、それぞれの計算方法をしっかりと把握しておく必要があります。

タイミングが変わると空室率も変わる

瞬間空室率

物件を売却しようと考え、調査したときに、20戸の戸数があるマンションうち2戸が空室であったなら、空室率は10%となります。

最もシンプルな計算方法で、通常はこれが馴染みのある空室率の考え方です。これが「瞬間空室率」と呼ばれる計算方法です。

しかし、これでは必ずしも実態を反映しているとは言えません。意図的に空室が少ないタイミングを狙って計算することもできるからです。この数字はあくまである一時点を基準にしたものに過ぎないのです。

稼働平均空室率

より正確に実態を反映する方法としては「稼働平均空室率」という考え方があります。

ここでは1年間の全戸数の稼働に対して空室の月数がどの程度かを計算します。具体的には以下のようになります。

たとえば、20戸のマンションのうち1年間に4戸の解約があり、解約ごとに6ヶ月の空室期間がある場合、以下のように当てはめて計算します。

つまり、稼働平均空室率は10%になるのです。

瞬間空室率は単純に調査時点の空室の数により空室率を計算しましたが、こちらでは解約戸数と平均空室月数と2つの要素により空室率を計算しますので、より実態を正確に反映しています。

大切なのは戸数か床面積か賃料か

上記の計算はあくまで戸数をベースにしたものでした。戸数は簡単に把握し、比較できるというメリットがあります。マンションやアパートでは部屋による面積や賃料の差が少ないことから、戸数をベースにした「戸数ベースの空室率」を用いられるのが一般的です。

しかし、部屋の大きさや賃料は考慮されていないため、部屋の大きさや賃料に差がある物件では空室率と実際の収益に大きな乖離が発生するというデメリットもあります。

そこで、店舗や事務所では、「床面積ベースの空室率」が用いられます。

フロア貸しのオフィスを想像してみてください。大きなフロアも小さなフロアも同じ基準でカウントされてしまうと、正確な空室率が把握できません。面積の大きさが異なる店舗や事務所では特に床面積ベースでの空室率の把握が重要となります。

また、賃料は間取りや階数によっても異なることが一般的です。眺めの良い最上階と低層階ではたとえ床面積が同じでも賃料が大きく異なります。実際には同じ階の隣同士でも賃料が異なることも少なくありません。

投資家やオーナーにとって最も大切なのは収益です。「賃料ベースの空室率」こそ、不動産投資で最も重視しなければならない空室率なのです。

まとめ

「空室率」と言ってもさまざまな計算方法、基準があります。同じ物件であっても、どの基準で計算するかによって異なった空室率が算出されます

どのような目的で空室率のデータを利用するのか。そのデータはどのタイミングでどのような基準で算出されたものなのか。これらをきちんと把握して、利用目的に適合した空室率を求める必要があります

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